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末次攝子

「三つ子の時差出産――3年半前に試験管内で受精、凍結保存されていた卵から男の赤ちゃんが、ロンドンの病院で生まれた」と新聞が報じた。東洋の島国の女は、不気味なおそろしい気がするが、「1991年誕生」という双生児の姉妹と三児並んだ写真も載っている。

昨夏7月29日号の『週刊朝日』は「男なしでも赤ちゃんはできる」と、女性学研究の、ドイツの女性 (56歳) の本を紹介した。「単為(処女)生殖の例は昔からある」とか、アマゾンや女護が島など、またキリスト様の名も見える。今世紀にも、ドイツ、南米、スイスで、男性と交わらずに妊娠した、という話。「女性には本来、男性とのかかわりなしに子供を産む力が備わっていたのに、長い歴史の中で失われ、気づかないようにさせられてきたのではないか」と女史の推論が添えてある。

 

事業団常務就任祝いのパーティで

日本のその道の専門家もコメントを寄せているが、「男たちは出産を支配したかった」とは、なるほど刺戟的。残念ながら私たちは、「妊娠出産は自然の生理現象、子供は授かりもの」と聞かされて育った。

戦後間もなく、ロマン・口ランの『魅せられたる魂』(宮本正清訳) のヒロイン、アンネットの「みごもった子供は要るが、恋人は棄てる」矜(ほこ)り高い自立の精神に目をみはる。“未婚の母” の表現は、日本の社会にまだなかった。

人口過剰で破裂しそうな地球の悩みはさておき、自分の意志で「受胎」を「出産」をデザインできる時代を迎えているようだ。賢い強い女の行く手には、男なしの妊娠も?……。

さて、メダカも宇宙で抱きあったとか。「抱擁もなしに子供をつくるなんて味気ないわ」と、卒業してしまった私は、つぶやく。
 

(すえつぐ・せつこ/ジャーナリスト・高槻市文化振興事業団常務)

※所属などはすべて季刊「生命誌」掲載当時の情報です。

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