季刊誌「生命誌」通 巻7号 
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寄生植物の進化の系譜
樹上のラフレシア:大塚一壽
 直系1mを超えることもある巨大な花を咲かせるラフレシアは、奇怪な花の代表とされる。ぼってりとした肉質の赤い花は血や肉を思い起こすことから「植物のドラキュラ、吸血花」などというとんでもない名前がたてまつられることもある。でも、寄生植物ではあっても、ラフレシアは「吸血鬼」ではない。

樹上に巻きついたミツバカズラにラフレシアが咲いている
樹上に巻きついたミツバカズラにラフレシアが咲いている
 1991年にマレーシアで発行された科学雑誌に、樹上で開花しているラフレシアの写 真が載っていた。場所は南シナ海の小島ティオマンという。それまで話には聞いていたが、半信半疑でいた。ラフレシア・カントレーだということだが、写 真で見る限りでは、マレー半島にあるものとはずいぶんと雰囲気が違う。別 種か亜種か!?
 91年暮れ、私は知人の昆虫写真家と海賊の住む小島を訪ねた。海賊とは、近時この付近の漁場を大型船に荒らされ、その保証のなさに怒って、停泊中の船に乗り移り海賊行為をしている漁民のことである。彼らのほとんどがこの島に住んでいるという。さて私たちは人より得た略図を頼りに、島の南部のアッサに来た。ここに来るのには、北部の飛行場のあるテケッからモーターボートを雇い、南西部の村ムクまで運んでもらい、そこからさらに小さな峠を越えて1時間ほど歩かなければならない。
 迎えのボートは3日後に来る約束なので、その期間内に探さねばならない。私たちは宝探しよろしく、急斜面 のジャングルを歩き回った。狭い領域だが上ったり下りたりは結構きつい。数時間の後、大きな声に私は急斜面 を滑りながら現場に行った。直径50cmぐらいの巨木に巻きついたミツバカズラは目線付近で直径20cmはあり、その地表から、それぞれ2,4,7mほどのところに、花はついていた。ただ残念なことに古く、乾燥し茶色になり、たれ下がっている。しかし、まさしくラフレシアで、花弁も隔壁も、そして内部には円盤部も残っていた。カントレーとの比較ができる状態ではなかったが、樹上で咲くラフレシアの存在が確認できたことに、ひとしおの喜びを感じた。
 後日、私はマレー半島でふたたび樹上性のラフレシアに会うことができた。このときも花を見ることはできなかった。が、ティオマンでは見られなかった蕾の行列が延々と10mくらいの高さまで続いていた。見事であった。一斉に咲いたら…!思っただけで震えてしまう。

(おおつか・かずひさ/藤村女子高等学校教頭)

INDEX
  ラフレシアとその仲間たち:堀田満
ラフレシアの送粉システム:加藤真
ラフレシア発見譚:植村好延
Special Story

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