季刊誌「生命誌」通 巻31号 
「脳の生命誌〜仮説を楽しむ」展始まる
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「脳の生命誌〜仮説を楽しむ」展始まる
展示室の外観。正面に神経系の多様化の歴史が概観できる系統樹の絵を置いた。
展示室の外観。正面に神経系の多様化の歴史が概観できる系統樹の 絵を置いた。
 「脳の生命誌〜仮説を楽しむ」展が始まりまし た。展示の目玉は,なんといっても50点近い動物 の脳標本です。マッコウクジラやゾウの巨大な脳 から,トンボやミミズの小さな脳まで,さまざまな動物たちの脳が登場します。脊椎動物の脳のほとんどは東京大学総合研究博物館のもので,年代が経っていますが見応え十分です。北海道大 学からお借りした昆虫やミミズなどの脳は,脳につながる神経節も一緒に取り出されており,神経系全体が見られます。昆虫など小さな動物の神経系の展示はこれまでにないと思います。
フタホシコオロギの神経系。
フタホシコオロギの神経系
  脳は誰にとっても興味深い器官です。とくに, 脳と心の関係は,21世紀最大の問題の一つですが,今回は脳の進化に焦点を当てました。脳というと,意識,学習など高次機能に眼が向きますが, 他の生物とも共通する基本的な機能あっての脳と考えたからです。
  ところが,脳の進化の研究者は意外なほど少 ないのです。著書や文献もほとんどないので,情報収集にもかなり苦労しました。それにもかかわ らず興味深い仮説はたくさんあるのです。仮説は魅力的でも実証が難しく学問としては成り立ちにくいのだけれど,酒の席では頻繁に話題にのぼるのだそうです。なんだか面白そうじゃありませ んか。
  今回の展示では,こうした仮説を紹介します。 仮説を立て,実証していくのが科学で,仮説のないところに面白い研究はありません。仮説を十分に備えたこの分野は,これからどんどん面白くなると思います。
  ぜひ,環境との関係の中で進化してきた脳の歴史をご覧になって,皆さんも酒席での仮説議論を楽しんでください。

展示室内。マッコウクジラからナメクジの脳まで,約50 種類の標本が目玉。
展示室内。マッコウクジラからナメクジの脳まで,約50種類の標本が目玉。

(鳥居信夫/本誌)
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