形態の自己形成
 自然界での形態の形成過程は、自己形成(self-organization)よりなる。その代表例が雪の結晶である。
 自己形成の過程で大切な法則は、マルコフ連鎖(Markov chain)と呼ばれるものである。マルコフ連鎖では、現在置かれた状態(Mn)から次の状態()への移行だけを対象とし、現在自分が置かれた状態にどのようにして到達して来たかは問わない。ただ、次の状態に移行する法則(Rule M)だけが決められており、同じことを何度も何度も繰り返すのである。ある環境のもとに置かれた粒子の系は、マルコフ連鎖だけで、自ずと形態を形成する。単純な規則だけで美しいパターンを作り上げるのである。
 動態系(dynamical system)の自己形成のプロトタイプとして名高いものがバナード対流(Bernard convection)と呼ばれる熱対流である。温度が僅かに違う大きなプレート二枚の間に水を閉じ込める。下側の盤の方が温度が高い状態で、盤の温度を一定に保ったまま平衡状態に達すると、水は無数の小室(cell)を作り上げる。下のプレートで熱せられた水の上昇と重力の微妙な関係が水の動きを制御した結果、対流が起き小室を作るのである。プレートの温度が変わり、水の動きが止まれば、小室も消滅する(図8)。
(図8)バナード対流
 自然界で見られるバナード対流のほとんどはマランゴニ異型(Marangoni variant)とよばれる。バナード対流における上部プレートが存在せず、その代わりに、表面から一定の速度で熱が逃げていくという条件が加わると、ここから生まれる熱勾配が、対流の担い手となる。
 脳は自己形成するが、その基本となるものが、熱対流(この場合はfree convection)なのである(図9)。物理学に強い人のために式をあげておくと、それは、
で、与えられる。
(図9)
熱対流による脳形成のシミュレーション
熱対流に法則に従って作られる形態(左)は、実際の脳と詳細に渡って一致する(右)。
中田先生に質問 

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