1.「コト」に着目する科学
- 註1:『新しい自然学—非線形科学の可能性』
- 蔵本由紀著。岩波書店(2003年)、ちくま学芸文庫(2016年)。モノの分析を最重要と考える主語的記述の科学ではなく、異なるモノを横断する述語的記述を主軸に据えて自然を体系的に語ることの重要性を考察した書。
文中に移動→ - 註2:エルヴィン・シュレーディンガー
- 【Erwin Schrödinger】[1887−1961]
オーストリアの理論物理学者。原子などの量子状態を表すシュレーディンガー方程式などを提唱し、量子力学の発展に貢献した。『生命とは何か―物理的にみた生細胞』(岡小天・鎮目恭夫訳、岩波文庫、1944年)を著し、物理学者や化学者が生物学に参入するきっかけをつくった。
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2.空白部分と多様性
- 註3:ニュートンの運動方程式
- アイザック・ニュートン(1642−1727)によって定式化された、物体の運動を記述する以下の式。F=ma。Fは物体にかかる力、mは物体の質量、aは物体の加速度を表している。
文中に移動→ - 註4:エンペドクレス
- 【Empedocles】[BC490—430ごろ]
古代ギリシアの自然哲学者・医者・詩人・政治家。物質の根源は4つ(火、水、土、空気)からなり、それらを結合・分離する2つの力(愛、憎)があると考えた。この説は後にアリストテレス(BC 384−322)に引き継がれたが、同時代にデモクリトス(BC460−370ごろ)が原子論を唱えていた。
文中に移動→ - 註5:テオドシウス・ドブジャンスキー
- 【Theodosius Dobzhansky】[1900−1975]
ロシアの進化生物学者。実験室内だけで遺伝学を進めるのではなく、野外でショウジョウバエを観察し、地域内での変種が他地域のハエよりも遺伝的に似ていることを発見した。
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3.切り口としてのゲノム
4.生きものにとっての情報
- 註7:イリヤ・プリゴジン
- 【Ilya Prigogine】[1917−2003]
ベルギーの化学者・物理学者。物質やエネルギーが出入りする非平衡開放系の熱力学を研究した。非平衡状態における「散逸構造(註11を参照)理論」の構築によって、1977年ノーベル化学賞を受賞した。
文中に移動→ - 註8:テレンス・ディーコン
- 【Terrence Deacon】
米国の人類学者。特に脳の発生と進化に興味をもち、言語の起源との関わりについても考察している。邦訳された著作として『ヒトはいかにして人となったか―言語と脳の共進化』 (金子隆芳訳、新曜社、1999年)がある。
文中に移動→ - 註9:クロード・シャノン
- 【Claude Shannon】[1916−2001]
米国の電気工学者・数学者。情報について数量的に扱えるようにし、情報に関わる数学的理論をつくった。
文中に移動→ - 註10:ガストン・バシュラール
- 【Gaston Bachelard】[1884−1962]
フランスの哲学者・科学哲学者。新しい科学的知識を得るには、認識論的障害を乗り越えることが必要であり、前科学的な思考と断絶することが求められる「否定の哲学」を提唱した。
文中に移動→ - 註11:散逸構造
- エネルギーが熱として失われていく過程で、自己組織化のもとに発生する定常的な構造のこと。例えば、上下に温度差のある流体中に見られる規則的な対流構造がそれであり、細胞を始めとした生きものの構造も散逸構造とみなされている。
文中に移動→ - 註12:アラン・チューリング
- 【Alan Turing】[1912−1954]
イギリス出身の数学者・計算機科学者。コンピュータの理論的なモデルを提唱し、今日のコンピュータ技術の基礎をつくった。亡くなる数年前から生物に興味をもち、生物の形態形成に関わる論文を書いた。
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5.日常と科学
- 註13:アルフレッド・ホワイトヘッド
- 【Alfred Whitehead】[1861−1947]
英国の数学者・哲学者。近代西欧で生まれた機械論的自然観の問題点を指摘し、有機体論的自然観を提唱するとともに、自然をモノではなく過程として捉える「プロセス哲学」を提唱した。イリヤ・プリゴジン(註7を参照)も彼の理論に影響を受けたとされる。
文中に移動→ - 註14:ノーウッド・ハンソン
- 【Norwood Hanson】[1924−1967]
米国の科学哲学者。観察は理論を前提としており、その影響を免れることはできないとする「理論負荷性」の概念を提唱し、新しい科学哲学の成立に先導的役割を果たした。
文中に移動→ - 註15:トーマス・クーン
- 【Thomas Kuhn】[1922—1996]
米国の科学史家。『科学革命の構造』(中山茂訳、みすず書房、1971年)の中で、科学の知見は徐々に積み上がっていくものではなく、断続的・革命的な変化があるとする「パラダイムシフト」の概念を提唱した。
文中に移動→ - 註16:藤澤令夫
- 【ふじさわ・のりお】[1925−2004]
日本の哲学者・西洋古典学者。古代ギリシア哲学を専門とし、特に精確な原典解釈を通じてプラトン哲学の内実を明らかにした。加えて、「イデア論」の成立と発展についての新解釈を示し、独自のプラトン理解を提示した。
文中に移動→ - 註17:大森荘蔵
- 【おおもり・しょうぞう】[1921—1997]
日本の哲学者。物心二元論に対する批判から、物と心の問題を解決する「重ね書き」の方法を提唱した。物理的なものと心的なものは個別に描写するしかなく、その二つの描写を重ね合わせたものが、人の「経験」の正確な描写であるとする考え方である。
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