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PAPER CRAFT

となりの生命誌・ウイルス❷

生きものの細胞に入って増え、細胞を壊して次に移動する存在であるウイルス。生命誕生以来、生きものにさまざまな影響を与えてきた1mmの1万分の1以下の小さなウイルスの巧みなしかけを工作で手にとりましょう。

タバコモザイクウイルス(TMV)

タバコモザイクウイルス(TMV)

タバコモザイクウイルス(TMV)は、タバコの葉がマダラ模様になる病気の原因で、19世紀末に最初のウイルスとして発見されました。長さ300nm、直径18nmのタンパク質の筒に、遺伝物質である6395塩基の一本のRNAを巻き込んでいます。1935年に米国のスタンリーがウイルスを単離すると、生命の基本に挑む研究対象として注目され、DNA二重らせんの発見者、ワトソンもTMVがらせん状であることに着想を得てDNA構造を解いたそうです。しかし、TMV構造のワトソンの理解は不十分で、正しい構造はDNAでX線回折像を示したロザリンド・フランクリンが次の目標として37歳で早逝するまで尽力し、提案したものです。その後も構造解析は精緻を極め、1985年に難波啓一(大阪大学名誉教授)がTMVタンパク質を形づくる約2400個の原子の立体配置を2.9Åの分解能で解析した成果を発表しました。

TMVの感染と組み立て

TMVは傷ついた葉の細胞に入り込むと、タンパク質は外れて、RNAが宿主のタンパク質合成を乗っ取り、細胞から細胞へと移動します。そして、ウイルスの部品となるタンパク質とRNAが揃うと、自動的にウイルスに組み上がります。まず17タンパク質からなる円盤が2つ重なったユニットができ、その1タンパク質にRNA3塩基がはまって、RNAを巻き込みながら積み上がるしかけです。TMVに学んだこの原理は、外来のタンパク質をつなげたワクチンやRNAを保護するナノサイズ・チューブなどの技術に応用されています。

TMVに感染したタバコの葉

参考文献:Nanomed. Nanobiotechnol. 12(2), e1591(2020) / Front. Plant Sci. 4, 12(2013)

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