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研究館より

表現スタッフ日記

2021.04.15

桜と自治会とミミズ

昨年に続いて、JT医薬総合研究所の「桜の通り抜け」は中止となりましたが、桜はいつもどおりに咲き、生命誌研究館にも束の間の賑わいをもたらしてくれました。

今年は桜の木の下でシートを敷いて宴会、という楽しみ方はできませんでしたが、若かりし頃には私も職場での宴会のため場所取りをしたことがあります。その際、桜の木の下が草ボーボーでシートが敷きづらい、という経験を意外としたことがないのは、桜のもつ化学物質が他の植物の発芽を阻害しているためだと、昨年読んだ『したたかな寄生』(成田聡子・著)という本に書いてありました。アレロパシーとよばれるその作用は、帰化植物であるセイタカアワダチソウが強い作用をもつことで有名で、一時期その繁殖力が問題になったこともあるようです。とはいえ日本中の空き地がセイタカアワダチソウだらけになったわけではありません。アレロパシーも、植物同士あるいは微生物や昆虫を遠ざけたり引き寄せたり、もっと広いコミュニケーションのひとつだと考えることもできます。一見黙ってじっとしているように見える植物も、いろいろな手段を使って他の生きものと共生しています。

コミュニケーションといえば、全くの私事で恐縮ですが、この1年、地元自治会の事務局長という役割を担い、自治会四役の一員として地域内の問題解決などに取り組みました。様々な世代、様々なご家庭が同じ地域に住んでいる中で、それぞれが自分中心の主張をしてしまっては成り立ちません。相手の立場を思いやり、まずよく聞くこと、そしてどうすればいいのか話し合うこと、コミュニケーションの大切さを今まで以上に学びました。考えがぶつかってイライラしてしまうこともあり反省しきりですが、仏のように穏やかにとはいかずとも、植物の姿を見習って上手に暮らしていきたいと感じた1年となりました。

私事ついでにもうひとつ。約1年前の表現スタッフ日記に、館内案内スタッフである私が受付カウンターに座っているということを書きましたが、この春からはまた新しい役割を担当することになりました。館内ガイドや受付で来館者の方とお会いする機会は少なくなりますが、これからは地面の下をミミズみたいにあちこち耕して、生命誌研究館が色とりどりの花を咲かせるための小さなお手伝いができたらと思っています。


(左)桜にとまるアトリ(3月30日撮影)
(右)JT医薬総合研究所のクロガネモチに現れたレンジャク(今年2月、敷地外より撮影)

室園純子 (館内案内スタッフ)

表現を通して生きものを考えるセクター