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研究館より

表現スタッフ日記

2023.02.15

退職のごあいさつ

表現セクターの主な仕事は、季刊誌や展示物の制作、催しの企画運営です。一見すると、広報や宣伝のように、生命科学を分かりやすく伝える媒体や機会をつくる仕事に見えます。実際、私はBRHの中の人になるまで、そのような仕事の延長ととらえていました。でも、表現セクターに従事するうちに、全くの見当違いだと気づいたことを思い出します。

BRHは、生命科学を基盤としながら、文化や社会を語り、新しい学問、新しい社会を志す場所です。研究セクターと同様に、表現セクターも研究部門と位置づけ、「表現を通して生きものを考える」ことを続けています。「人間は生きもの、自然の一部」という考えのもと、自然を知り、自然離れをしない、でも人間独自の社会をつくっていくことが大事、と考えて活動しています。その成果の一つとして、季刊誌の発行や企画展の開催があるのです。

「科学のコンサートホール」として、表現物は誰にとっても楽しめるものにしたい。ただ、わかりやすくおもしろく科学を紹介する、という姿勢が第一優先でないためか、難しいと評されることも多いのですが、噛み締めるとじわじわ分かってくる、考えてみようと思わせてくれる、という言葉をいただくことがあります。私たちにとっても難しいこと、答えがないことを、試行錯誤しているのですから。だからこそ、みなさんには研究館に何度も足を運んでいただきたいですし、WEBでも語り合うことを大切にしています。館員にとっても、参加してくださる方にとっても、BRHは「問いを発掘する場」です。

BRHは、今年30周年を迎えました。私が入社したのが2016年なので、30年のうちの7年を過ごしたことになります。世界でただ一つのユニークな場所で、常に新しいことを考え、発見し、発信する活動の一端を、どれほど担えただろうと思うと、ちょっと自信がありませんが、私にとって自分が本当に大事だと思い、学び考えたいことに集中できる、稀有で幸せな仕事でした。これからは外の人として、BRHの研究活動に参加します。そしてこれからも「表現を通して生きものを考える」ことを、自分の仕事でかたちにしたいと思っています。ありがとうございました。