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研究館より

中村桂子のちょっと一言

2023.03.15

役に立つ「生命誌」

けんたろうくんと一緒に「生命誌」を考えた次の日は、土木関係の方たちと話し合いました。今年に入って考え続けてきた「生きものとしての土木」がテーマであり、ここにも生命誌を一緒に考える方たちがいて下さるのです。普通に考えたら子どもと土木の組み合わせは何のことやら分からないでしょうが、生命誌はこれをつなげるのです。「人間は生きもの」というところで。

九州から帰ってきてすぐの仕事は、北海道美唄市の「小学校農業科副読本」づくりのお手伝いでした。「私たちは生きものです」という文章で始まり、「生命誌絵巻」が活躍する導入を書かせていただき、ちょっとワクワクしています。福島県喜多方市で続いている「小学校農業科」が広まってくれるといいのにと願っていてもなかなかだったのですが、やっと二つ目が始まります。

子ども、土木、農業と並び、それを「私たちは生きもの」という言葉がつないでいる社会って悪くありませんよね。「生命誌」がとても具体的な形で動き始めているという実感があります。久しぶりに訪れたBRHで、館の皆さんが「生命誌」を育ててくれている様子に触れることができて楽しかったのですが、それが具体的に役立っているところにいるのも楽しいものです。

社会全体を見ると、戦争はますますおかしくなっていますし、日本も決してよい状態とは言えませんが、だからこそ地に足をつけてコツコツ行こうと思う人が出てきているのだと思います。そこで役に立つ「生命誌」でありたいと思っています。

中村桂子 (名誉館長)

名誉館長よりご挨拶