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研究館より

表現スタッフ日記

2025.10.15

はじめまして

こんにちは、今年5月から展示案内スタッフを務めています。私は学生時代、分子生物学と呼ばれる分野を専攻しましたが、社会人になってからは化学分野(主に高分子)や知財関係の仕事に携わり、生物の世界からは随分遠ざかっていました。この度、かつて馴染んだ分野に再び関わる機会に恵まれ、大変嬉しく思っております。

スタッフの一員として、改めて生命誌絵巻を見ると、年齢を重ねたせいか、扇の要(かなめ)から円弧に向かって、その先に描かれるであろう未来の生きものが気になります。彼らはどのような環境で生息しているのだろうか。食物網のバランスはとれているのだろうか。種の数は激減しているのだろうか。昨今の情勢から、ついつい悲観的な見方に陥りがちになってしまいます。

一方で、38億年ともいわれる生きものの歴史を顧みると、いやいや意外とたくましく適応する種もいるだろうし、新たな種が出現するだろう、などと楽観的に思ったりもします。地球の46億年史において有為転変は免れませんが、生態に悪影響を及ぼす人為的な要因をせめて少しでも減らせないものかと切実に思います。
 


せいぜい2、3世代先の未来しか考えない生活を送ってきた私ですが、億年単位のスパンで描かれる当館の展示物を日常的に目にすることで、物事を長期的に捉える視点が芽生えてきたように感じます。当然、自分の存在が長い長い生命の歴史の一瞬にすぎないことも自覚しますが、何世代も先の生きものに対して思いを馳せるのは新鮮で面白くもあります。

今を生きる生きものは、過去の世代から遺伝物質(DNA)だけでなく、多様な生態系、酸素や炭素などの循環システム等々、数多くの恩恵を受け継いでいます。これらを未来の生きものに引き継いでいけるよう、自分にできるささやかなことを模索していきたいと考えています。

少々堅苦しいご挨拶になってしまいました。是非ご来館いただき、または季刊誌や当サイトを通じて、「問いを発掘する場」としての当館の試みを皆様に楽しんでいただければ幸いです。駆け出しの身ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。