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研究館より

ラボ日記

2023.01.17

プラナリア実験の現状

新型コロナの影響や空調の異常などによって実験に用いるプラナリアが二度ほど「ほぼ絶滅」状態に陥りました。その後、少しずつ数は増えていったのですが、同じ飼育方法をとっているにも関わらず、なぜだか大きくならなくなりました。昨年の春にふとしたきっかけからちょっと変わった飼育条件にしたら、プラナリアは大きくなり始めました。もう少し大きく育ったら実験が再開できると期待に胸を膨らませていたところまで昨年のラボ日記(2022/6/1)に書きました。

さて、その後です。一定水準以上の大きさのプラナリアが育ちましたので、夏頃から自切の実験を開始しました。プラナリアはある程度おおきく育ったら自らの体を切断し、それぞれの断片を再生することで個体数を増やします。これまでは(現在でも)まず切れて、次に再生すると考えられていました。しかし私たちは、一個体に見えるプラナリアの体の中で再生が始まり、ある程度再生が進んだときに物理的な切断が始まると考えています。「切断」というよりは、体の中に将来の頭部と尾部が隣接することから、その間の接着性に変化が起こり、結果として「分離する」のではないかと考えるのです。この証明のため、まず人為的にメスで切断したあと定期的に観察して尾部断片に眼が確認できるタイミングを図りました。眼の遺伝子や脳の遺伝子がどのタイミングで発現を開始するかについても調べました。現在、自切してからどれくらい経ったら眼が確認できるのか?どれくらいの時間で眼や脳の遺伝子の発現が始まるのか調べています。まだ予備実験の段階ですが、眼が確認できる時期は、人為的切断と自切の間に少なくとも半日から一日の差がありました。もちろん自切断片の方に早く眼ができます。少なくとも外観の観察からは、私たちの仮説が正しいように感じる結果を得ることができました。

人為的に切断した実験では、正確に12・24・36・48・・・時間という実験ができます。しかし、自切はプラナリア任せになります。機嫌良く泳いで(歩いて)いるプラナリアのどれがいつ自切するのか分かりません。自切を誘導する条件も見えていません。なので、一定の大きさのプラナリアを1匹ずつシャーレに入れ、自切してくれるのをひたすら待つしか現時点では他に方法がありません。しかも、自切は光で阻害されます。波などの水流があっても自切しにくいようです。なので、自切したか否かの確認作業も難しいのです。早朝に出勤して1時間毎に確認してもまったく切れてくれません。夕方まで粘っても切れてくれないので諦めて帰宅したら夜のうちに切れています。上で「半日から一日」と書いた理由は、この夜のうちに切れた個体の観察結果から導き出された数字なのです。でも、たまに昼間に切れてくれる個体もいますので、いまは一匹一匹気長に採集しているところです。

実は他にもすこし奇妙な現象にも気づいているのですが、そのことはいずれ報告いたします。

橋本主税 (室長(〜2024/03))

所属: 形態形成研究室