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研究館より

ラボ日記

2026.04.15

植物研究者からアゲハチョウへ

4月から尾崎ラボ (昆虫食草進化研究室) に加わりました、井上史朗と申します。
4月1日から勤務させていただいているのですが、研究館の前の桜が綺麗で初日の出勤から毎日気分が上がっております。

尾崎ラボでは、「アゲハチョウが食草を認識する仕組み」を明らかにする研究に取り組んでいきます。

アゲハチョウは偏食性が強く、特定の植物しか食べることができません。さらに、幼虫(イモムシ)はほとんど移動することができないため、どの植物に産卵するかは生存に直結します。そのため、メスは幼虫の餌となる植物を見極めるために、前脚の味覚受容体を使って「植物の味」を確かめ、産卵を行います。初めて聞いた時には「非常によくできたシステムだ!」と大変感心致しました。

具体的に、「植物の味」というのは各植物が作る特有の化学物質を感知していると考えられています。
植物は、進化の過程で各科・属・種で環境適用や防御に関わる特有の化学物質を作りだします。その種類は非常に多く、植物界全体では100万種類以上にのぼるとも言われています。これは、植物は自ら移動することができない制約のもとで、環境に適応するため各々独自な進化の賜物でして、植物の生きる知恵とも言えるでしょう。

わかりやすい植物化学物質と言えば、カフェイン、カプサイシン、ニコチンなどを耳にすることが多いのではないでしょうか。
カフェインは、コーヒーやお茶に含まれる成分で、眠気覚ましになります。
また唐辛子の辛味成分であるカプサイシンや、タバコのニコチンなども、植物が外敵から身を守るために作り出した化学物質です。
この植物の生きる知恵、植物の化学物質の多様性に、これまで私は大変興味を持って専門に研究を行ってきました。

これからはこの経験を生かして「アゲハチョウは、植物が作る種固有の防御物質を逆に利用し、どのように植物を見分けるか」を明らかにしていこうと思います。

このように意気込んではいるものの、実は動物実験は初めてであり、当分の間はアゲハチョウの捕獲・飼育・人工交配の習得に四苦八苦することになりそうです。
それでも、楽しみながら一つひとつ学び、着実に研究を進めていきたいと思います。

井上 史朗 (奨励研究員)

所属: 昆虫食性進化研究室

「どのようにアゲハチョウは食草を認識するのか」という問いに対して、植物分子・生物有機化学的アプローチを駆使して、分子レベルでのメカニズム解明を目指します。