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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【空海とマンダラ】

2013年2月1日

中村桂子

突如何を言い始めたんだいと思われそうですが、実は今、表紙に「空海、マンダラ」と書いたノートを持っています。空海やマンダラを徹底的に研究しようなどと大それたことを考えているわけではありません。因みに、ちょっと関心を持ってみますと、なんとたくさんの本があることか。密教はもちろんですが、絵画や精神医学などさまざまな面から空海やマンダラが研究されています。小説もあります。まずはそれらの本を読み、皆さまの教えを乞い、生命誌との関連を考えたいと思っています。今から四半世紀ほど前、生命誌を考え出した時、頭の中にあるまったく新しいことをどう説明するかが問題でした。話していても全体像はなかなかイメージしてもらえないので、図示してみようと思ってつくったのが「生命誌絵巻」です。幸い、いろいろな方の力を借りることで、どなたにもわかっていただける表現になりました。この絵巻を更に展開したいと、これまでも立体化したり、コンピュータの中に入れたりしましたが、面白いもので、結局平面で動かない絵が一番多くを語るようなのです。見る人の想像力を呼びさますことが大事なのだろうと思います。

マンダラにもそのようなところがありますね。そこでマンダラって何なのだろうと調べてみました。いろいろな考え方があり、一言では言えないことがわかりましたが(あたりまえですよね)、なるほどと思った性質としてこんなことがあげられます。

  • ・空間・領域・場の性格をもつ
  • ・中心をもつ(ただし、中心も周辺も部分であり全体が大事)
  • ・多種多様な要素が互いに調和して全体をつくる
  • ・遠心的な流れと求心的な流れが共存する

これを見て、「生命誌絵巻」ってマンダラなんだと思いました。場の性格がありますし、多種多様な要素が互いに調和して全体をつくっていますし、遠心と求心があります。中心も周辺も部分であり全体が大事というのもその通りです。つまり、「生きもののありようを表わそうとしたらマンダラになる」ということなのではないでしょうか。生命論的世界観ここにありということかなと、例によって勝手に自分の切り口で納得しています。このあたり空海はどう思っていたのかな・・・もう少し読み進めてみます。

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