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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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私の書斎

2014年8月1日

仕事柄、家で調べものをしたり、文を書いたりしなければなりません。そのための本や資料が必要です。そこで書斎を持たなければ・・・そうなりそうですが、実は私は書斎と呼べる部屋を持ったことがないのです。三菱化成生命科学研究所に室長として入り、責任ある仕事をすることになった時、子どもたちは5歳と2歳でした。仕事があるからと言って、自分だけの空間に入りこむことなどできるはずもありません。なんとか坐って読んだり書いたりできるのは食卓です。そこで、思い切って食卓を丸い大きなものにし、大事なものは眞中に置くという工夫をしました。子どもたちがお絵描きや工作をしたり本を読むのも食卓です。こうして、家に帰ってから寝るまでずっと家族と一緒にいながら仕事をするというスタイルが定着してしまいました。今も仕事場は食卓です。食事の後片付けが終ったら資料を整理しておく小さな部屋(納戸のようなもの)から必要なものを取り出してきます。お茶を飲んだり、お喋りをしたり、時にテレビに面白い番組があればついそれを観てしまうのですから、なんとも効率の悪い仕事ぶりです。でも、今更一人で部屋にこもったからと言ってすばらしいことができることにはなりそうもありません。ザワザワした中での集中です。そう言えば、もう一つの書斎は毎週東京と京都を往復する新幹線。近くで女性四人連れがお喋りを始めても大丈夫です。

今の食卓は特大の堀りごたつです。夏は風の通り道なので、皆がここで過せば冬の暖房費も夏の冷房費もほとんどかからないということになり、自然になじんだ暮らしになっています。

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