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みんなの広場

研究

2022.11.11

細胞分裂と細胞分化

ミッキー

先日、橋本先生のレクチャーを受けました。お話は私には少し難しかったのですが興味深く聞かせて頂きました。有難う御座いました。参加のきっかけは「幹細胞は、分化全能性を維持しながら必要に応じてさまざまな細胞種へと分化をしなければなりません。」という一見矛盾したことに興味を持ったからでした。このことについて自分なりに考えて見ました。

もし、幹細胞が2細胞に分裂する時、一方は分化全能性を維持し、他方はそれを失い分化細胞となるとしたらどうなるでしょうか?例えば、プラナリアの体にある「幹細胞塊」について考えると、1つの幹細胞塊は細胞周期の後、同数の娘幹細胞塊と、同数の分化細胞集団とを産生します。幹細胞塊は娘、孫へと分裂を続けながらも総数は変わりませんが、分化細胞は細胞周期ごとに同数ずつ産生され続けることになります。これはある意味「幹細胞が、分化全能性を維持しながら分化細胞を産生する」ことになると思いました。

素人の思い付きですが、実際にはどんなことが起こっているのか興味深いです。お読み頂き有難う御座いました。

2022.11.11

1. 橋本主税(形態形成研究室)

レクチャーへのご参加ありがとうございました。また、鋭い考察も興味深く拝見いたしました。ご指摘の点はすごく重要です。分裂した幹細胞が全て分化細胞になったら幹細胞が枯渇して体の維持ができません。逆に、分裂した細胞が全て幹細胞になっても、死んでゆく体細胞を補うことができず体を維持できなくなります。生体内では幹細胞と分化細胞の比率が常に適切に調節されています。レクチャーの文脈で言えば、細胞周期を維持するか、それとも細胞を休眠させるかの調節ということもできるでしょうか。

さて、ご提案の「モデル」ですが、これは非対称分裂と呼ばれる制御機構に近いと思います。分裂して生じた二つの娘細胞の片方が幹細胞としてとどまり、もう片方が分化過程に入るというものです。私たちは論文の中でいくつかの生物種の例をあげて議論しているのですが、ここでは私たちがプラナリアで考えている仕組みについて簡単に紹介させていただきます。

私たちは「幹細胞ニッチ」というものを想定しております。ニッチに接触している幹細胞は細胞周期を維持することで幹細胞としての性質を維持し、ニッチから物理的に離れてしまった幹細胞は増殖を止めて分化に至るとの考えで、同じ細胞から生じた二つの娘細胞が異なる性質を持つ方法としての一つの説明です。

プラナリアでは餌を食べたらすぐに幹細胞の増殖が爆発的に増えることが知られています。ニッチは定義的には分化した細胞ですので、餌を食べて分裂を始めた時のニッチの大きさは変わりませんので、分裂によって増えた細胞はすべて分化することになり体を構成するさまざまな細胞となってプラナリアは成長します。体が成長するとニッチも大きくなり、結果として結合できる幹細胞の数も増えることとなります。

逆に餌のない状態での幹細胞は、分裂できないか極めて遅い速度での分裂となります。分化した細胞は老化して死んでいきますが、餌のない状態が続くと幹細胞の分裂が進まないため分化細胞が供給できずプラナリアの体も縮小します。このときにはニッチも小さくなり、それに伴って幹細胞の数も減るということです。

この説明はあくまでも作業仮説であり、空想の産物ですので、実際に「幹細胞ニッチ」をプラナリアが持つのかどうか現時点では明らかになっておりません。しかし私たちの研究から、ニッチの存在を匂わせる結果がすこし得られてきています。また、新しいことが分かりましたらレクチャーなどの機会でご紹介させていただきます。

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