その他
2025.09.21
ナガサキアゲハ蛹化不全(頭だけ幼虫?)
me ginoga de
「頭部だけ幼虫のチョウ」に関するネットブログを、むかし見かけたことがありますが、
私が今飼育している蛹化不全のナガサキアゲハは
このようになる可能性があるのでしょうか?
必要であれば写真等も送りたいと思います
生物学は素人なので的外れなことをお願いしたら申し訳ないのですが、何かしらの研究のお役に立てられないでしょうか
(このナガサキアゲハはまだ死んではいないようですが、
かなり痛々しい姿であり生きられるかは全くわかりません)
蛹化不全の内容としては、おおむね以下の状態です
・昨日(9/19)の夜見る限りは前蛹であった
・幼虫時代の頭部はそのまま(外殻だけでなく中身も詰まっている)
・幼虫の頭に引っかかるような形で、幼虫時代の皮が中途半端なところまで剝けている
・蛹の下半身は蛹になろうとしているのか、一般的なアゲハの蛹のようにエビ反りになろうとしている
・脱皮時にもがいたからなのかは不明だが、しっぽ部分の糸は外れて胸部分の輪っかの糸で宙づり状態であった
2025.09.27
1. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)
大変詳細な観察の記録をありがとうございます。
ナガサキアゲハの痛々しい姿に、心を痛めておられることと存じます。
ご質問いただいた件について、私の知識の範囲でお答えさせていただきます。
この蛹の状態について
お話しいただいた状況は、蛹になる過程で古い皮を脱ぎきれなかった「蛹化不全(ようかふぜん)」という状態だと思われます。
* 幼虫の皮が頭部に残ってしまったため、その下にあるべき蛹の頭や胸が正常に形成されず、固まることもできません。
* 下半身が蛹らしくなろうと動いているのは、プログラムされた通りに発育が進んでいる部分もあるのだろうと考えられます。
* しっぽ(腹部末端)の糸が外れてしまったのも、脱皮の際にもがいたためだと思われます。
残念ながら、このように蛹化に失敗してしまうと、体の構造が不完全なため水分が蒸発しやすく、またそこから細菌などに感染するリスクも高くなります。そのため、無事に羽化して蝶になることは、極めて難しいと言わざるを得ません。
「頭部だけ幼虫のチョウ」との関連性
確証はありませんが、ブログで見られたという「頭部だけが幼虫のチョウ」は、おそらく遺伝子やホルモン異常など、非常に稀な発生異常によって生まれる特殊な個体(モザイク個体など)なのではないかと思われます。幼虫と成虫では、組織の構造や仕組みが違いすぎて、モザイク個体として成立するとはちょっと考えにくいですが…
今回ご相談のケースは、そういった発生異常とは異なり、あくまで脱皮という物理的なプロセスでの失敗が原因であろうと思います。この蛹が「頭は幼虫、体は蝶」という姿で羽化する可能性は、高くないと考えられます。
研究へのお役立てについて
このナガサキアゲハを思うお気持ちと、科学的な探究心からのご提案、本当にありがとうございます。そのお心遣いに敬意を表します。
蛹化不全は、飼育下では残念ながら時々起こってしまう現象で、その原因も湿度不足、栄養状態、ストレス、病気、遺伝的な要因など様々です。そのため、この一個体だけを研究機関に提供しても、原因の特定は難しく、直ちに研究の対象となることは稀なのが実情です。
しかしながら、そのように生命を注意深く観察し、疑問に思う気持ちは、生物学の第一歩であり、とても尊いものです。ぜひその気持ちを大切にしてください。
個人的には、このように頭部が幼虫のまま固まってしまった蛹を直接見たことはありません。非常に痛々しく、厳しい状態かとは思いますが、今は命ある限り、そっと見守ってあげてください