1. トップ
  2. 語り合う
  3. みんなの広場
  4. ジャコウアゲハの蛹化について

みんなの広場

研究

2025.11.24

ジャコウアゲハの蛹化について

うりちゃん

飼育中のジャコウアゲハ幼虫が前蛹になりました。でも最低気温が0℃近くになる朝晩の寒さで4個体が蛹になりません。それで帯糸を切って腹部の先端の固定を外して室内に入れました。ティッシュペーパーや軍手の上に転がしておくと、翌日には全て蛹になりました。さて、暖かい室内に入れた蛹をどうやって寒い屋外に出すか迷っています。蛹になると、蛹化直後でも屋外に出して大丈夫ですか。蛹がピクピク動いている間は休眠していないので、室内飼育で少しずつ寒さに慣らしていくのがいいのでしょうか。他に寒さに慣らす方法はありますか。

2025.11.29

1. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)

ジャコウアゲハの幼虫、寒さの中で無事に蛹になってよかったですね。帯糸を切って救出されたとのこと、適切な判断だったと思います。10度未満の気温では、昆虫たちは発育できません。

結論から申し上げますと、「今はまだ屋外に出さず、しばらく室内で様子を見る」のが最善の方法です。

1. 蛹化直後はまだ準備中です
蛹になった直後は、体の構造を変えている最中であり、寒さに耐えるための「休眠(越冬)準備」が完全に整っているわけではありません。この段階で急に寒い(10度未満)屋外に出してしまうと、ダメージを受ける可能性があります。

2. まずは2週間〜1ヶ月、室内で様子を見てください
* もし休眠していない個体であれば、この期間内(早ければ10日〜2週間ほど)で羽化します。
* もしこの期間を過ぎても羽化しないようであれば、その個体は完全に「休眠モード(越冬蛹)」に入ったと判断できます。

3. 休眠を確認してから屋外へ
上記の期間を経て「羽化しない=休眠している」ことが確認できれば、すでに体は寒さに耐えられる状態になっています。このタイミングで屋外に出しても大丈夫です。徐々に寒さにならす必要はありません。

4. 屋外での保管場所
屋外に出す際は、以下の環境を選んであげてください。
* 直射日光が当たらない場所: 冬場でも直射日光が当たると温度が上がるので、充分な寒さを経験できなくなります。

今は無理に寒さに慣らそうとせず、「羽化するか、休眠しているか」の結果が出るまで、暖かい室内で静かに見守ってあげるのが、一番安全な方法です。

2025.12.17

2. うりちゃん

ジャコウアゲハの蛹化について教えていただきありがとうございました。11月22日に蛹化したので、12月20日頃に様子を見て外に出したいと思います。ただ、蛹の翅になる部分が黒い個体があります。その個体がこのまま羽化するか、休眠して来春羽化するか、死んでしまうかも含めて暖かくなるまで見守りたいと思います。昼間は暖かくても朝晩の冷え込みがきつくなると幼虫の動きが鈍くなり、食べなくなりました。温度が変化するのは良くないと思っていましたが、そんな時は幼虫であっても室内で前蛹から蛹へと成長のスピードを上げた方が良いのでしょうか。ところで、休眠して越冬するか羽化するかは若齢幼虫時代の日長時間によって決まるとありましたが、気温は関係しないのでしょうか。若齢幼虫時代の日長時間が短くても、部屋の中など暖かい所におけば休眠せず羽化するということはありますか。

2025.12.17

3. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)

サナギの翅の部分が黒くなっている個体がいるとのこと、羽化が近いサインなのか、別の要因なのか、とても気になるところかと思いますが、部分的に黒っぽくなった蛹は時々観察されます。

ご質問いただいた「寒さで動かない幼虫の対応」と「休眠の条件」について、提供いただいた情報を整理し、補足を含めて回答いたします。

1. 動きが鈍くなった幼虫の温度管理について
朝晩の冷え込みで幼虫が食べなくなっている場合は、暖かい場所に移動させてあげることをお勧めします。

食べることは最優先: 幼虫にとって、サナギになるための栄養を蓄えることは何よりも重要です。気温が低すぎて活動量が落ち、餌を食べられない状態が続くと、体力を消耗してサナギになれずに死んでしまう可能性があります。

成長を促す: 「温度変化は良くない」というご懸念はもっともですが、この時期に関しては、日中の暖かい時間帯だけでなく、夜間も室内の比較的暖かい場所に置いて、幼虫・前蛹から蛹への成長をサポートしてあげる方が安全です。

2. 休眠と気温・日長の関係について
とても良いところに着目されましたね。結論から申し上げますと、気温も休眠の判断に若干の影響を与えますが、やはり「若齢期に経験した日長」が決定的な要因となります。

日長が最重要(メインスイッチ)
ジャコウアゲハを含め多くの鱗翅目昆虫(チョウとガの仲間)は、若齢幼虫(小さい頃)の時期に「日が短くなってきたな」と感じると、体内で「自分は休眠蛹(きゅうみんよう)になろう」というスイッチが入ります。一度このスイッチが入ると、その後に環境が変わっても覆ることは少ないとされています。

気温の影響(サブ要素)
気温も全く関係ないわけではありません。例えば、日長が「休眠するかどうかの境界線」くらいの際どい短さだった場合、気温が高いと「まだ夏だ」と勘違いして休眠しない蛹になり、気温が低いと「もう冬だ」と判断して休眠する、といった補助的な判断材料になることはあります。

すでに若齢期に短日(秋の日長)を十分に経験している場合は、後から部屋の中などの暖かい場所に置いても、基本的には休眠(越冬)蛹になる可能性が高いです。例外的に代謝が上がりすぎて羽化してしまう個体が出る可能性もゼロではありませんが、基本は「日長」のプログラムが優先されます。

コメントする

お名前(ニックネーム可)
メールアドレス
コメント
アイコン
  • 入力いただいた情報は自動で掲載されません。
    当館の担当者が内容を確認の上、後日掲載させていただきます。
    掲載の折にはメールでご連絡いたします。
  • 内容によっては掲載されない場合があります。
  • メールアドレスは上記以外の目的に使用いたしません。