研究
2026.01.25
ジャコウアゲハの人工飼料飼育について教えてください。
青木 聡
尾崎先生
突然の投稿になり、申し訳ありません。アゲハ蝶類の自由研究をして3年目になります。庭に「蝶ドーム」を設置し、離れの自室では温度・湿度管理をしながら幼虫の飼育を行い、「ジャコウアゲハの蛹化成長カーブ」について研究をする中学1年生です。蛹化する1週間前の糞量・自重量を取得し整理してみると、自重量を越える摂食量があったことが確認でき、成虫の開翅長との関連も孵化直後の摂食環境により異なることがわかりました。次年度は人工飼料飼育をテーマにしたいと、プレ観察を行いましたが開翅長が78㎜と小さい成虫であったり、蛹化できずに死んでしまう幼虫もいました。ウマノスズクサを粉砕して粉末にすることは難しく、乾燥した葉に工夫ができればと検討中です。葉にあえて傷害を与えたウマノスズクサからアリストロキア酸等、植物が産生する防御物質を抽出し、乾燥したウマノスズクサに散布して食草にしたら、そもそも飼育は可能だろうか?開翅長に影響を及ぼすのだろうか?ほか蛋白補助の介護医療食品との組み合わせも考えています。アドバイスをいただければ幸いです。よろしくお願いします。
2026.01.28
1. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)
「ジャコウアゲハの蛹化成長カーブ」を研究し、摂食量と成虫の開翅長の関係まで考察されているとのこと、非常にレベルの高い研究で驚きました。自重量を超える摂食量のデータなどは、まさに実証的な素晴らしい成果ですね。
人工飼料作成の4つのコツ
正常な個体を育てるためには、以下のポイントを徹底してみてください。
1. 葉の乾燥は短期間で完全に: 湿気が残ると変質しやすいため、一気に乾燥させます。
2. 乾燥に熱を使わない: 熱を加えると、幼虫の摂食行動に必要な成分が壊れてしまうようで、食いつきが悪くなります。ドライフラワーを作成する方々が使用している、シリカゲルを用いるのがオススメです。
3. 初齢幼虫から与える: 幼虫飼育の途中で生葉から人工飼料に切り替えると、食べてくれないことが多いです。。孵化直後から人工飼料で育てるのが鉄則です。
4. 作成時の加熱を最小限に: 飼料として固める際、加熱しすぎると幼虫の食いつきが悪くなります。
アゲハ人工飼料プロトコール: https://www.brh.co.jp/upload/labo_top_page/lab01/content/raise.pdf
このレシピをベースに、まずは「非加熱・短期間乾燥」させたウマノスズクサ粉末を使って試してみてください。河川敷などで手に入る、ウマノスズクサやオオバウマノスズクサで大丈夫です。
ジャコウアゲハはアゲハ類の中でも、比較的人工飼料で育てやすい種類です。当ラボで公開しているプロトコールを参照していただければと思います。プロトコールでは防腐剤としてホルマリンを使っていますが、使用しない方が良いです。
ご提案のアイデア(防御物質・蛋白補助食品)について
防御物質(アリストロキア酸等)の散布
ジャコウアゲハにとってアリストロキア酸は天敵から身を守るための重要な物質であり、幼虫の摂食刺激物質でもありますが、これを「追加で散布する」ことが成長促進(開翅長)に直結するかは慎重に見極める必要があります。
アゲハチョウの研究で有名になった長井丈君(小学生)の観察によると、ナミアゲハ幼虫に乾燥葉を与えると、体内のホルモンバランスに異常が起こるらしいことがわかっています。通常は5齢で終齢となりますが、乾燥した葉を与えると、脱皮回数が増えて「6齢幼虫」が出てしまうことがあるそうです。
介護医療食品(蛋白補助)の組み合わせ
昆虫の成長にはタンパク質が不可欠ですが、過剰な摂取やバランスの崩れは、逆に代謝不全を招くリスクがあります。まずは、植物(食草)に含まれる本来の栄養バランスを崩さないことが重要です。市販の人工飼料「インセクタ」は、とてもバランスの良い餌ですので、粉末化して食草の「味」を追加して幼虫に食べさせることをオススメします。