その他
2026.04.18
青筋アゲハ蝶の蛹の長期休眠(越夏越冬)に関する質問
kk-kiyo
昨年5月に複数の青筋アゲハ蝶の幼虫を保護し、すべて6月に蛹になりました。10日程で羽化したのですが、1匹だけ羽化せず、そのまま経過観察していました。その蛹が今年の4月18日に羽化しました。蛹の状態で10カ月間、越夏と越冬をしましたが、このように長期間を蛹で休眠することは通常あることなのでしょうか。
2026.04.22
1. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)
とても興味深い観察です。
アオスジアゲハは、初夏の長日条件では通常、蛹になってから比較的短期間で羽化しますが、まれに長日条件でも越冬のための休眠に入ってしまい、翌春まで蛹のままでいる個体がいます。
幼虫の時に感じた日長(にっちょう)が休眠のきっかけになりますが、その感じ方には個体差があります。そのため、同じ条件で育っても、ある個体はすぐ羽化し、別の個体は長期の休眠に入ることがあります。今回の個体も、もしかすると体内時計の感じ方が少しずれていた【変わり者】だったのかもしれません。
ただ、このような【変わり者】が少数いることには、意味がある可能性もあります。生きものの世界では、全員が同じタイミングで羽化するより、少し違うタイミングで出てくる個体が混じっていた方が、思いがけない環境の変化に耐えられることがあります。たとえば、みんなが一斉に羽化したタイミングで、たまたま天候不順や餌となる植物の不調、天敵の多発などが重なって生き残りにくい状況になったとします。極端な場合には、集団として大きな打撃を受けるかもしれません。けれども、翌年まで眠っていた個体がいれば、その年の一時的な不運を避けて、次の年に子孫を残せる可能性があります。
このように、少数の個体が違うタイミングで羽化することは、集団全体にとっての危険分散(きけんぶんさん)になっているのかもしれません。
今回のように、1匹だけが越夏・越冬して翌年4月に羽化したというのは、とても珍しいことですが、あり得る例だと思います。丁寧に育てていただき、辛抱強く観察されたからこその発見ですね。貴重な記録だと思います。

