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研究館より

表現スタッフ日記

2022.03.01

人間は生きもの、自然の一部

ちょうど一年前、3月1日の日記も私が書いていたようで、「食草園に少しずつ春の訪れを感じています。」といった内容でした。確かに、最近枯れ木に新芽の膨らみのようなものを感じたり、冷たい黒い土の下から緑の芽が顔を出し始めました。やっと動き出した…。というのが正直な気持ちです。もちろん冬の間も止まっていたわけではないのですが、やはり冬は食草園のオフシーズン感は否めません。

食草園のInstagramを始めて2年が経ちました。チョウや食草、その他の生き物たちの四季折々の様子を写真や動画に収めて公開しています。しかし、生きものたちがじっと春を待つ季節「冬」屋上の12平方メートルがそんなに大きく動くことはありません。「昨日も見たからな…」「寒いから早く撮って部屋に入ろう…」正直そう思ってしまうこともありました。しかし、そんな気持ちでは当然何も見つかりません。私が思うに、何か見つけてやろうという邪な気持ちでは自然の中に入れてもらえないのかもしれません。そう思ってからは、冬場はしっかり暖かい格好をして食草園に向かいます。そしてじっくりと木を眺め、地面を眺める。なにか昆虫が動く瞬間を見逃さないように…と思っていた夏とは違う見方です。そうすると、木の枝に残ったキハダの葉痕と目が合います。夏や秋とは違う色になったスイバの葉っぱに気がつきます。土の上ではアシタバのこぼれ種から芽が出ていました。葉痕のそばから新芽が出てくるのかな、赤くなった葉はこの後どうなるの、土の中では他にどんなことが起こっているんだろう。たくさんのものが見えてきて、静かな食草園が生きものの物語でいっぱいになります。食草園が、自然が、私を生きものとして仲間に入れてくれた気がしてとても嬉しい気持ちになりました。「人間は生きもの、自然の一部」を改めて肌で感じた冬でした。