中村桂子のちょっと一言
2025.06.03
やっぱり土と笑顔がいいな
北海道で、子供たちやレイモンドさん・荒谷さんご夫妻との笑顔に満ちた時間を過ごして帰ってきた東京の街は、相変わらず夜遅くまでキラキラ輝き、その下でのお米騒動も変わらず続いていました。北海道での体験、東京の現状のどちらが未来へと続く道かと考えれば、答えは明らかでしょう。
21世紀は「文化・文明の社会的将来」を、「人間の生物的本来」と組み合わせて考えなければならない。生命誌から生まれるこの考えは、大橋力(山城祥二)さんや松岡正剛さんなどと共有し、話し合ってきたことであり、これからも考え続けたいことです。建築家の伊東豊雄さんも、「高層化、巨大化する人工環境で失われてしまった人と地域のつながりを、そして地域を通して人と人の絆を取り戻すことこそがこれからの建築の最も重要な役割」と言っていらっしゃいます。これからは地方が大事だとも。心強いお言葉です。
権力を持つ人々にとっての未来は、今の延長上にしかありません。具体的には、今動いている経済と科学技術だけで考えられています。世界中のお金の大半を握っている人たちがこれで動いていますから、最重要事項は宇宙開発とAIになります。大阪万博は「いのち輝く未来」を唱えていますが、それは技術を用いて長く続かせるいのちです。「AIがあれば何でもできます」と言われても、なんだか違うと思う他ありません。
私たちが主体性を持って科学技術を使いこなすのはよいのですが、現状はお金とAIに支配されて追い立てられているとしか言えません。ドローンが撮影する険しい山の続く風景を楽しんでいたら、今や完全に兵器です。AI誘導となればゲーム感覚でいのちが奪われることになりますし、費用対効果が抜群によいという評価を見て心が寒くなりました。
効率は悪くても、大金は手に入らなくても、コツコツ生きる方がよいなと思いながら、今日は幼稚園の子どもたちと、アゲハチョウやシジミチョウが飛び交う中で楽しい時間を過ごしてきました。毎日土に親しんでいるという5歳児の笑顔は素敵です。
21世紀は「文化・文明の社会的将来」を、「人間の生物的本来」と組み合わせて考えなければならない。生命誌から生まれるこの考えは、大橋力(山城祥二)さんや松岡正剛さんなどと共有し、話し合ってきたことであり、これからも考え続けたいことです。建築家の伊東豊雄さんも、「高層化、巨大化する人工環境で失われてしまった人と地域のつながりを、そして地域を通して人と人の絆を取り戻すことこそがこれからの建築の最も重要な役割」と言っていらっしゃいます。これからは地方が大事だとも。心強いお言葉です。
権力を持つ人々にとっての未来は、今の延長上にしかありません。具体的には、今動いている経済と科学技術だけで考えられています。世界中のお金の大半を握っている人たちがこれで動いていますから、最重要事項は宇宙開発とAIになります。大阪万博は「いのち輝く未来」を唱えていますが、それは技術を用いて長く続かせるいのちです。「AIがあれば何でもできます」と言われても、なんだか違うと思う他ありません。
私たちが主体性を持って科学技術を使いこなすのはよいのですが、現状はお金とAIに支配されて追い立てられているとしか言えません。ドローンが撮影する険しい山の続く風景を楽しんでいたら、今や完全に兵器です。AI誘導となればゲーム感覚でいのちが奪われることになりますし、費用対効果が抜群によいという評価を見て心が寒くなりました。
効率は悪くても、大金は手に入らなくても、コツコツ生きる方がよいなと思いながら、今日は幼稚園の子どもたちと、アゲハチョウやシジミチョウが飛び交う中で楽しい時間を過ごしてきました。毎日土に親しんでいるという5歳児の笑顔は素敵です。
中村桂子 (名誉館長)
名誉館長よりご挨拶