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研究館より

中村桂子のちょっと一言

2026.06.16

子守唄に続いてー「花はどこへ行った」

 Where have all the flowers gone?

この言葉で始まる歌を御存知ですよね。

 花はどこへ行った 少女たちが摘んでしまった
 少女たちはどこへ行った 男たちのもとに嫁いでいった
 男たちはどこへ行った 兵士になって戦場へ行った
 兵士たちはどこへ行った みんな墓場に行ってしまった
 墓はどこへ行った たくさんの花に覆われた

この間に何度も「 Oh, when will they ever learn? いつになったら分かるのだろう」という言葉が入ります。

1955年にピート・シーガーが作った曲が元になって、その後展開した名曲です。M・ショーロフの『静かなドン』(大作で厚い本が何巻も。母がお仲間と読んでいたのを思い出します)の中に出てくるコサック民謡にヒントを得て書かれた歌詞とのこと。曲も民謡に基づいていると言われます。

キングストン・トリオ、P.P.M、ブラザース・フォー(なんて懐かしい名前でしょう)などのカヴァーがあり、どれも素敵ですが、当時はジョーン・バエズの透明な声が好きでした。それに合わせてよく歌ったものです。

60年代には、ボブ・ディランの『風に吹かれて』です。「どれだけ弾を撃てば武器を捨てる気になるの」「一人一人にいくつの耳をつければ他人の泣き声が聞こえるようになるの」などなど、これも「Oh, when will they ever learn?」と問うている曲です。

極めつけは、1971年のジョン・レノン『イマジン』です。「天国も地獄もなく、僕たちの上にあるのは空だけ。みんなが今を生きている。国なんてないと思えば殺す理由はないでしょう。欲張りもしなければ飢えもしない。僕のことを夢想家だと言うかもしれないけれど、でも僕一人じゃないはず。そういう人たちが仲間になれば、みんなが世界を分かち合える。」私もまさにこの仲間の一人です。

私の若い頃は、このような曲を皆で歌いました。どれも美しい曲で、歌っているとよい気分になります、日本は戦争のバカバカしさを知って、そんな事には二度と関わらないと決めたよい国だ。そこで明るい未来をつくるには何が大事だろうと語り合い、それを実行する人になろうと思いました。そして、その道を歩いてきたつもりです。

ところが、とんでもないことになっています。今、このような皆で歌える曲がないのが残念です。子守唄の延長で、語り掛けるように歌う唄、誰もが口ずさめる曲が欲しいと思います。

台風も地震も、人間の力では止められません。でも戦争は、やらないと決めればよいこと。人間が止められるのです。いのちを大切にという当たり前の想いを美しい曲にして歌ってくれる人が出て来ないかな。『イマジン』を超えて。
 

中村桂子 (名誉館長)

名誉館長よりご挨拶