表現スタッフ日記
2026.09.15
旅先で見つけるいきものたち~隠岐編~
はじめまして!昨年の6月よりガイドスタッフとして館内のご案内をさせて頂いている佐久間です。こちらの表現スタッフ日記に登場することなく、1年が経ってしまいました…。もう既に館内でお会いしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
普段はとある研究所で細胞分裂に関する研究を行っており、土曜日をメインに生命誌研究館の方に来ています。旅行や写真撮影を趣味としているので、本日は「旅先で見つけるいきものたち」というタイトルで日記を書かせていただこうかなと思います。本題に移る前に、自己紹介がてら私と生き物の話を少ししたいと思います。(少しじゃなくなってしまったので読み飛ばしてもらっても構いません!)
生命誌研究館にいらっしゃる皆さまや、研究館のスタッフは、昔から生き物が大好き!という方が多い気がしますが、私が生き物に興味をもったのは高校3年生の頃です。実は生物学の研究者になろうと思ったのもこの頃でして、今思えば、すごく好きなパートナーを見つけて、付き合って3日で、私にはこの人しかいない!絶対この人と結婚する!と決めたような盲目さがあったように思います。実際、生物学科に進学した頃の私は生物学という学問のことを「彼氏」と呼んでいました。目が合った瞬間に恋に落ちたような運命的な出会いの話は他の機会にするとして、それまでは、そこらへんにいる生き物に特段意識を向けてこなかった人生でした。
ガイドスタッフをしていると、良く思い出す小さい頃の記憶があります。私は食草園に皆さまをご案内するときに、よく、「イモムシを育てたことがありますか?」と聞きます。だいたい8割くらいの方がイモムシを育てたことがあり、「小学校で育てたことがありますよ」「庭のミカンに沢山つきます」と答えてくださいます。私はというと、小学4年生のころにキアゲハのイモムシをみつけて飼ったことがあります。家にそこそこの庭があり、大量発生したパセリでみつけた最終齢のキアゲハです。当時の私はへんな虫がついていると図鑑を確認し、どうやらチョウになるらしい、それはおもしろいではないか、と虫かごに回収しました。最終齢でしたから早いうちにサナギになり、ぜひチョウになるのを見てみたいと羽化を楽しみにしていましたが、結局このキアゲハは羽化しませんでした。ちょうど台風くらい大雨が降った次の日に、もう羽化しないんだと悲しんだのを今でも覚えています。雨に濡れてしまったのがよくなかった、家の中にいれておけば大丈夫だったかもしれないのに。そもそも虫かごなんかにいれずにそのままにしておけばよかったのに。よくよく考えてみれば、自然界では雨も降りますし強い風も吹きます。雨に濡れたことに加え、サナギが床に落ちてしまったことでもう羽化はしないと考えたように記憶していますが、もしかしたらあのキアゲハはまだ生きていたかもしれません。結局、食べたアイスの棒を墓標にして庭の一等地にサナギを埋めました。
小学校ではヤゴを育てました。しかしこのヤゴも死にました。そのころから、生き物とは隔絶したように思います。無意識に避けていたのかもしれません。そんななか、生物学という学問に惚れ込み、生物学科に進学します。ちなみに、この時私が惚れ込んだのは、この世界にオスとメスが存在する理由、つまり有性生殖についてです。特に、オスという、自分のようなメスではないもう片方を形づくるY染色体に興味を持ち、遺伝子とホルモンについて知りたいと考えていました。
ちなみに、サクラは横に線がはいる特徴的な樹皮で、鋸歯と呼ばれる細かいギザギザで縁取られた葉を持ちます。葉の根元には蜜腺と呼ばれる小さい膨らみがありますから、今度お散歩した時に確認してみてください。サクラの種類ごとに鋸歯の具合や蜜腺の位置、葉の大きさなどが違いますから沢山集めてみても面白いと思います。
ようやく本題に移りますが、先日隠岐諸島に遊びにいきました。隠岐諸島は島根県に属している大きな4つの島を含む約180の島の集まりで、古くから流刑地として知られています。日本には屋久島や小笠原諸島など色々な島がありますが、隠岐諸島は島としては新参者で、島でよくある固有種というのはほとんどいません。
今回は4つある島のうち、中ノ島(海士町)、西ノ島、知夫里島の3つの島を訪問しました。さっそくそれぞれの島で出会った生き物たちを紹介していきましょう。
まずは中ノ島から。

カニです。調べたところアカテガニ(Chiromantes haematocheir)という種みたいです。赤い爪のアカテガニですが、隣にいる小さめの褐色個体もアカテガニのようです。甲羅にあるニコッとスマイルの窪みが特徴です。
私が遊びに行ったのは新月が近い7月10日頃。夜になるとカニが一斉に道路を渡りはじめます。かなりのカニが頻繁に道を横断しているので、道路にはこれまでに轢かれたカニの痕が沢山ついていました。お母さんは淡水域である用水路や川の近くに住んでいますが、どうやら海水が好きな赤ちゃんのために川の河口に移動し産卵をするようです。カニの赤ちゃんはいわゆるプランクトンですから(ゾエア幼生)、隠岐諸島の豊かな海を支えているわけです。
カニを撮影していたら隣にいたニホンアマガエル(Dryophytes japonicus)。落ち葉を獲物と勘違いしており、真剣に狙いを定めてから落ち葉をぺろんっとしていました。
次に西ノ島。

西ノ島と、私が訪問しなかった隠岐の島には固有亜種のオキノウサギ*(Lepus brachyurus okiensis)が生息しています。Lepus brachyurus はニホンノウサギです。さて、どこにウサギがいるかわかりますか?オキノウサギに会えるのはレアとのことで、慌てて撮影したらズームをするのを忘れたようです。脚と耳が短いという特徴があります。
*参考リンク【https://www.oki-geopark.jp/geopark-sites-features-list/993/】

こちらは由良比女神社。社殿には中に引き寄せられていくイカが彫られています。隠岐諸島は古くからイカが集まる好漁場であり、年間を通して複数種のイカがとれます。

海岸には剥き出しの岩場や洞窟がたくさんあり、イワツバメ(Delichon urbica)があちこちに飛んでいました。かなりのスピードで飛ぶので写真にはおさめられませんでしたが、イワツバメが巣をつくる岩場をご覧ください。

訪問した3島では放牧が盛んです。ウシもウマもそこらへんに生えている草を食べますが、どうやらスイバ* は好きじゃないようで、スイバばかり残っていました。スイバだけが残ったスイバ畑には、ベニシジミがラッキー♪とばかりに味見にきていました。
*スイバ(Rumex acetosa)ではなくギシギシ(Rumex japonicus)の可能性もありますが、どちらの植物にもシュウ酸が含まれており、家畜は好んで食べないそうです。
最後に知夫里島。

こちらでも沢山のベニシジミに遭遇!シロツメクサの花の上でランチ中でした。

知夫里島は島民よりもタヌキの方が多いらしいですが、どうやら人為的に持ち込まれた個体がここまで殖えてしまったようです。
その他にも、写真におさめられなかった生き物がたくさんいます。ナミアゲハもたくさん飛んでいましたし、アオスジアゲハも見かけたと思います。固有亜種のオキノアザミも、国内外来種のキジも見ました。
旅行などでいつもと違った土地にいった際には、ぜひ、周りの自然に目を向けてみてください。いつもと違う自然かもしれないし、驚くことにいつもと似た自然が広がっているかもしれません。
実は昆虫についての実習はコロナの影響で参加できておらず、いまでも昆虫はよく知らないままです。生命誌研究館でガイドスタッフをやるようになって多少詳しくなりましたが、まだまだ皆さんにはかないません。生命誌研究館で佐久間を見かけた際には、ぜひ身の回りの昆虫について教えてくださいね。
普段はとある研究所で細胞分裂に関する研究を行っており、土曜日をメインに生命誌研究館の方に来ています。旅行や写真撮影を趣味としているので、本日は「旅先で見つけるいきものたち」というタイトルで日記を書かせていただこうかなと思います。本題に移る前に、自己紹介がてら私と生き物の話を少ししたいと思います。(少しじゃなくなってしまったので読み飛ばしてもらっても構いません!)
生命誌研究館にいらっしゃる皆さまや、研究館のスタッフは、昔から生き物が大好き!という方が多い気がしますが、私が生き物に興味をもったのは高校3年生の頃です。実は生物学の研究者になろうと思ったのもこの頃でして、今思えば、すごく好きなパートナーを見つけて、付き合って3日で、私にはこの人しかいない!絶対この人と結婚する!と決めたような盲目さがあったように思います。実際、生物学科に進学した頃の私は生物学という学問のことを「彼氏」と呼んでいました。目が合った瞬間に恋に落ちたような運命的な出会いの話は他の機会にするとして、それまでは、そこらへんにいる生き物に特段意識を向けてこなかった人生でした。
ガイドスタッフをしていると、良く思い出す小さい頃の記憶があります。私は食草園に皆さまをご案内するときに、よく、「イモムシを育てたことがありますか?」と聞きます。だいたい8割くらいの方がイモムシを育てたことがあり、「小学校で育てたことがありますよ」「庭のミカンに沢山つきます」と答えてくださいます。私はというと、小学4年生のころにキアゲハのイモムシをみつけて飼ったことがあります。家にそこそこの庭があり、大量発生したパセリでみつけた最終齢のキアゲハです。当時の私はへんな虫がついていると図鑑を確認し、どうやらチョウになるらしい、それはおもしろいではないか、と虫かごに回収しました。最終齢でしたから早いうちにサナギになり、ぜひチョウになるのを見てみたいと羽化を楽しみにしていましたが、結局このキアゲハは羽化しませんでした。ちょうど台風くらい大雨が降った次の日に、もう羽化しないんだと悲しんだのを今でも覚えています。雨に濡れてしまったのがよくなかった、家の中にいれておけば大丈夫だったかもしれないのに。そもそも虫かごなんかにいれずにそのままにしておけばよかったのに。よくよく考えてみれば、自然界では雨も降りますし強い風も吹きます。雨に濡れたことに加え、サナギが床に落ちてしまったことでもう羽化はしないと考えたように記憶していますが、もしかしたらあのキアゲハはまだ生きていたかもしれません。結局、食べたアイスの棒を墓標にして庭の一等地にサナギを埋めました。
小学校ではヤゴを育てました。しかしこのヤゴも死にました。そのころから、生き物とは隔絶したように思います。無意識に避けていたのかもしれません。そんななか、生物学という学問に惚れ込み、生物学科に進学します。ちなみに、この時私が惚れ込んだのは、この世界にオスとメスが存在する理由、つまり有性生殖についてです。特に、オスという、自分のようなメスではないもう片方を形づくるY染色体に興味を持ち、遺伝子とホルモンについて知りたいと考えていました。
生物学科は文字通り生き物について学ぶ学科でして、大学1年生から色々な生き物の採集を授業で行います。海に行って貝やカニをひろい、森に行って樹木の一部を切り取ります。あの時から見ないようにしてきた生き物たちが、自分をみて!とばかりに目の前に広がりました。この世界は生き物で溢れています。しかも多種多様な生き物です。小学生や中学生に勉強を教えていた時は、勉強なんてしたって意味がない、なんで勉強をしなきゃいけないのか、とよく言われましたが、知識は人生を豊かにします。鴨川沿いをお散歩して、「あ、この樹皮と葉の感じはサクラだな、サクラって赤色に染まるんだ」と、それだけで、お散歩がいつも以上に楽しいじゃないですか。
ようやく本題に移りますが、先日隠岐諸島に遊びにいきました。隠岐諸島は島根県に属している大きな4つの島を含む約180の島の集まりで、古くから流刑地として知られています。日本には屋久島や小笠原諸島など色々な島がありますが、隠岐諸島は島としては新参者で、島でよくある固有種というのはほとんどいません。
今回は4つある島のうち、中ノ島(海士町)、西ノ島、知夫里島の3つの島を訪問しました。さっそくそれぞれの島で出会った生き物たちを紹介していきましょう。
まずは中ノ島から。

カニです。調べたところアカテガニ(Chiromantes haematocheir)という種みたいです。赤い爪のアカテガニですが、隣にいる小さめの褐色個体もアカテガニのようです。甲羅にあるニコッとスマイルの窪みが特徴です。
私が遊びに行ったのは新月が近い7月10日頃。夜になるとカニが一斉に道路を渡りはじめます。かなりのカニが頻繁に道を横断しているので、道路にはこれまでに轢かれたカニの痕が沢山ついていました。お母さんは淡水域である用水路や川の近くに住んでいますが、どうやら海水が好きな赤ちゃんのために川の河口に移動し産卵をするようです。カニの赤ちゃんはいわゆるプランクトンですから(ゾエア幼生)、隠岐諸島の豊かな海を支えているわけです。
カニを撮影していたら隣にいたニホンアマガエル(Dryophytes japonicus)。落ち葉を獲物と勘違いしており、真剣に狙いを定めてから落ち葉をぺろんっとしていました。
次に西ノ島。

西ノ島と、私が訪問しなかった隠岐の島には固有亜種のオキノウサギ*(Lepus brachyurus okiensis)が生息しています。Lepus brachyurus はニホンノウサギです。さて、どこにウサギがいるかわかりますか?オキノウサギに会えるのはレアとのことで、慌てて撮影したらズームをするのを忘れたようです。脚と耳が短いという特徴があります。
*参考リンク【https://www.oki-geopark.jp/geopark-sites-features-list/993/】

こちらは由良比女神社。社殿には中に引き寄せられていくイカが彫られています。隠岐諸島は古くからイカが集まる好漁場であり、年間を通して複数種のイカがとれます。

海岸には剥き出しの岩場や洞窟がたくさんあり、イワツバメ(Delichon urbica)があちこちに飛んでいました。かなりのスピードで飛ぶので写真にはおさめられませんでしたが、イワツバメが巣をつくる岩場をご覧ください。

*スイバ(Rumex acetosa)ではなくギシギシ(Rumex japonicus)の可能性もありますが、どちらの植物にもシュウ酸が含まれており、家畜は好んで食べないそうです。
最後に知夫里島。

こちらでも沢山のベニシジミに遭遇!シロツメクサの花の上でランチ中でした。

知夫里島は島民よりもタヌキの方が多いらしいですが、どうやら人為的に持ち込まれた個体がここまで殖えてしまったようです。
その他にも、写真におさめられなかった生き物がたくさんいます。ナミアゲハもたくさん飛んでいましたし、アオスジアゲハも見かけたと思います。固有亜種のオキノアザミも、国内外来種のキジも見ました。
旅行などでいつもと違った土地にいった際には、ぜひ、周りの自然に目を向けてみてください。いつもと違う自然かもしれないし、驚くことにいつもと似た自然が広がっているかもしれません。
実は昆虫についての実習はコロナの影響で参加できておらず、いまでも昆虫はよく知らないままです。生命誌研究館でガイドスタッフをやるようになって多少詳しくなりましたが、まだまだ皆さんにはかないません。生命誌研究館で佐久間を見かけた際には、ぜひ身の回りの昆虫について教えてくださいね。


佐久間海帆 (展示案内スタッフ)
表現を通して生きものを考えるセクター