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研究館より

ラボ日記

2026.01.15

卵に打て(3)

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

新年とはいうものの、うまくいかない実験に四苦八苦しています。オオヒメグモの研究を続けてきて分かってきたことは、詳細に研究されたショウジョウバエとは似て非なる発生のしくみです。有名なビコイドはないし、Dppは移動する細胞から放出される、体節の元となる縞々の遺伝子発現も隣り合う細胞に波のように伝播し形成されていく。このようなしくみの違いを遺伝子の機能や分子ネットワーク、そしてそのような情報が書かれているゲノムの違いとして理解することが、研究者として目指すところです。

そして少しでも理解に近づくためのアプローチのひとつに、縞パターンが形成されるまでの遺伝子発現をライブで可視化したいというのがあり、そのためにゲノム編集を少しずつ始めているもののまだ手応えがありません。昨年ドイツのグループから出されたオオヒメグモでゲノム編集がうまくいったという論文はリトラクトされてしまいましたが、クモの糸が赤く光っていたのは本当だったのではないかと思っています。Cas9やガイドRNAを卵に注射するのか、オトナに注射するのか、タンパク質の方が良い、それともmRNAか? 比率やカーゴはどうする?試すことはたくさんあります。とりあえず相手を知ろうということで、Cas9タンパク質でDNAを切断するin vitro実験をしたところ、制限酵素とは随分性質が違うことが分かってきました。どうやらDNAとのアフィニティーが非常に高く、認識配列ではなくても結合しているらしいし、濃度が低いと時間が経っても切断できないらしいなど。年末年始の卵への注射はうまくいかなかったけれど、光っている卵を見たいし(他の動物より遅れをとってしまっているのもちょっと悔しいし)、トライあるのみです。

動物の初期発生に興味を持ち、オオヒメグモを用いて研究しています。