1. トップ
  2. 語り合う
  3. 研究館より
  4. 何億年も前に生きた私たちの祖先に思いを寄せて

研究館より

ラボ日記

2026.02.03

何億年も前に生きた私たちの祖先に思いを寄せて

JT生命誌研究館の一階受付の前には、当館の“看板生物”である二匹の肺魚―オーストラリア肺魚のアボカドちゃんと、アフリカ肺魚のマカロニちゃん―が暮らしています。
水槽の前を通るたび、彼らは愛らしい表情と美しいフォルム、そしてゆったりとした独特の動きで、心をそっと和ませてくれます。
そんな二匹を眺めていると、同じ「肺魚」という仲間なのに、どうしてこんなにも鰭の形が違うのだろう?とふと不思議に思う人は多いのではないでしょうか。

実は、私たち四肢動物の手足(前肢・後肢)は、遠い祖先である魚類がもっていた対鰭(胸鰭・腹鰭)から進化したと考えられています。では、同じ脊椎動物でありながら、なぜこれほどまでに付属肢の形は多様になったのでしょうか。アボカドちゃんとマカロニちゃんの姿は、その問いを静かに投げかけてくるようです。 

思いをさらに遠くへ馳せると、今から何億年も前という、気が遠くなるようなはるか昔の地球の水中で暮らしていた生き物たちは、どんな形の鰭を使い、どのように体を動かしていたのだろう、と想像が膨らみます。
そして、“鰭”から“肢”へと姿を変えた、脊椎動物の形の進化の中でもひときわドラマティック、そしてロマンティックな出来事。その背景では、具体的には細胞レベルでどのような変化が起きていたのでしょうか。

私の研究室では、この大きな進化の鍵を握ると考えられるある遺伝子に着目し、日々研究を進めています。最近、その遺伝子の機能が失われることによって、細胞がつくり出すコラーゲンの構造や配向が大きく変わることが分かり、この変化こそが“鰭から肢へ”という進化に深く関わっていたのではないか?という新たな可能性が見えてきました。

この成果をまとめた論文を、先日国際学術誌に投稿したところで、現在はプレプリントとして公開しています

投稿した論文は、専門家による査読プロセスがスタートしたばかりですが、何億年も前の地球に暮らした私たちの祖先たちの姿を想像し、彼らに思いを寄せながら、次にどんな問いを立てどんな実験に挑もうかと、今後の研究計画を練っているところです。

黒田純平 (室長)

所属: 形態発生研究室

色々な生物の形態形成に興味を持っていますが、主にゼブラフィッシュを研究材料として、細胞がコラーゲンの構造体との相互作用を介して構築する身体の形態形成原理を解き明かそうと研究をしています。