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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【宇宙での腰痛】

2000.6.1 

 先回、オサムシ君帰還の報告の中に、ちょっと書きましたが、毛利さんの二回目の体験の話です。実感を失ってしまわないうちに是非話したいということで先日対談をしました。詳細は「生命誌」や他の雑誌に出ますので、またその時にお知らせしますが、基本は人間の体、特に五感(恐らく六感めも含めて)のことでした。
 宇宙体験のような特異なものは決して忘れないでのではないかと思いましたら、それでも時がたつと忘れてしまうというのです。「人間とは忘れる動物である」と言った人はいませんでしたっけ。とにかく、子どもの時から忘れることは大得意で近頃ますますそれに磨きがかかっている私としては、恐らく人間にとって忘れることは大事なんだと勝手な解釈をしています。生々しい記憶がいつまでも残っていたら、それが嫌なことである場合は困りますし、たとえよいものでも新しい事柄が入っていくのに邪魔になるでしょう。こんなことを書いていたらテレビで幼児虐待を受けた女性が多重人格になったという例でトラウマの話、脳での記憶の話をしていました。体験が整理されないまま脳に入っていることが問題になるとか。記憶という人間の脳のはたらきを知る一つのアプローチでしょうが、まだまだわからないことだらけという印象を受けました。
 横道にそれましたが、毛利さんは一回目の時は、体が宇宙船の中の無重力(厳密には微小重力)状態に慣れるのに非常に苦労したそうです。そのことはあまり知らされませんでしたけれど、宇宙酔いも体験したし、ひどい腰痛に悩んだとのこと。余計なことを書いているうちに長くなりましたので、なぜ重力のほとんどないところで腰痛になるのかという理由と、今回は酔いも腰痛もまったくなかった理由は次回に。

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