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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【しっかりした生活があることの気持よさ】

2002.10.15 

中村桂子館長
 先回の「5000万種もいらない?」に対しては、これまでにない反応がありました。掲示板に書き込みをして下さった方々ありがとうございます。ただ“ご立腹ももっとも”という御意見はちがいます。私は少しも怒ってなどいません。まずは戸惑い、それからなるほどそういう見方もあるのだと感心し、世の中には多様な考えがあることを理解したうえで、私はやはり生きもので行こうと考えたということです。怒ることではありませんもの。
 人間中心、私中心も基本的にはそれしかできないわけで、これはどうしようもありませんよね。私もその一人。ただその時にちょっと待てよという声をどこから聞くかということだと思います。ノーベル経済学賞のセン教授も自分だけのことではなく、ちょっと他の人のことも考える経済を提案していらして、私は共感します。これについては思うことありなので、またの機会に書きます。御意見も下さい。今日は、私の日常をちょっと。
 「生きもの」で行こうの具体例として先日岐阜県伊自良村を訪れました。株価も為替相場もどこかで生活につながっているのでしょうが、あまりピンときません。それより関心があるのは食べもの。自給率を高めて自分たちで作った食べものを安心してゆったり食べることが、子どものよい教育にも地域の振興にもつながるのではないでしょうか。地球環境問題解決にも国際社会の中で存在感を示すにも、まず食べるものに無駄なエネルギーを使わないようにするとか、日常生活を安定させるなどということが大切だと思っています。
 そんな時岐阜県が「クリーン農業」という活動を始めていると知りました。農業は有機が基本ですが、それをすぐに農薬をまったく使わないということだとしてしまうとすべての人に広げるのは難しい。まず、国で決められた使用基準の30%減をめざしてそれをクリーン農業と名づけ、近くで安心して食べられる食べものを作る活動として根づかせようというものです。そのような活動を積極的に進めて行こうという地域を県が認定していく。そこで認定係としてお手伝いすることになったのです。その第一号として手をあげたのが岐阜市の隣にある伊自良村でした。
 そこがどんな村だったかは次回に紹介させていただきますが、一言で言うなら皆さん肩ひじはらずに、さりげなく、しかしエネルギッシュに活動していて楽しそうなのが印象的でした。その時の感じを表現するとしたら、「手ごたえのある生活がある」ということでしょうか。久しぶりに気持のよい一日でした。


【中村桂子】


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