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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【改めて“生きる”を基本に考える】

2006.9.15 

中村桂子館長
 最近とてもふしぎに思っていることがあります。直接お話をしていて、戦争をよしとする方にお会いしたことがありません。それなのに送られてくる雑誌や本には戦争の方を向いた話がこのところ急速に増えているのです。
 人間の歴史を見ると戦いの連続です。生きて行こうとすると戦わざるを得ないことも少なくなかったわけで、過去をすべて否定したり、戦争に関わった人を頭ごなしに非難することはできません。悩んだ末に戦う選択をしたこともあったのだろうと推測します。だからと言って、それは、私たちが戦争の方へ向けた考え方と行動をとるのをよしとすることにはつながりません。今は、戦うという選択はしないという選択が必要だと思います。
 まず、今の戦争は、ハイテク合戦(科学技術がこのように使われるのは科学の中にいる者としては疑問です)。しかも子どもたちが暮らしている日常の場に高性能の爆弾が落とされます(高性能の割には誤爆が多いのも不思議です)。そのような中で、事情はどうであれ、60年戦わないという姿勢を続けてきたことは、大切にしなければなりません。あらゆる国と話し合い、協力し合うという基本を通しているのに、どこかから攻められて国が消えるということはないでしょう。ところがそれを想定して戦いの方へ向うという記事が、雑誌に急速に増えているようです。すべてを見ているわけではありませんし、テレビをあまり見ないので全体はわかりませんが、「マスコミに登場したものだけが存在する」ということになっている現代社会ではこれは恐ろしいことです。自分で考えずに、流れに乗ることになりかねませんから。何が正しいかはわかりません。でも、いのちが続いていくことを基本に置く生命誌からの答は、どれほど大変でも戦わない努力をするというものです。


 【中村桂子】


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