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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【終わりがない(?)】

尾崎克久

 毎年1月の下旬は、BRHでは年度の活動報告書作成の季節です。文章は日本語ですが、一年間の結果をまとめるには論文作成に似た労力が必要です。研究の基本方針は変わらないので、導入部分(イントロダクション)は前年度と同じでも良さそうですが、時間が経って知識や経験が増えている分、当然変更するべき部分が出てきます。そこだけちょこちょこと書き換えてもいまいち代わり映えがしないので、読む側もつまらないでしょうし、自分自身も納得できません。結局、全ての文章を毎年新規に書き起こしています。そうすると、変化を付けようと特別意識をしている訳ではないのですが、同じ人間が同じ研究の基本方針について書いているのに、自分でも驚くほど文章ががらりと変わっています。今年度の分に限っても、読み返すと書き換えたくなる部分がたくさん見つかるので、完全書き直しに近い変更を何度か繰り返して、提出期限が来た時点であきらめて提出します。提出期限がなければ、ずーっと終わらないかもしれません。(「その前に提出期限がなかったら書き始めないだろう?」という突っ込みはお控えください。)
 本業ともいえる論文の作成にも同じことがいえて、「もうちょっとこういうことが解ってからにしたい・・・」などと考えていると、いつまでも書き始めることができません。かといって、時間が経ちすぎると研究結果の新鮮みも失われてしまいます。もしかしたら、同じことを別の誰かが先に論文にしてしまうかもしれません。研究には「完成」というものはないといいますので、内容の充実と質の向上を目指しているといつまでも論文にできないということになります。かといって、簡単に論文にしてしまってもインパクトの小さいものになってしまうでしょう。あまりこだわり過ぎず、ある程度納得できる内容の論文としてまとめられるところを見切るバランス感覚が重要なのだな、言い換えると上手に妥協できるようになる必要があるのだな、と感じています。今年はこれまでの研究内容を論文としてまとめることが、自分にとっての最優先課題です




[昆虫と植物の共進化ラボ 尾崎克久]

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