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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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オオヒメグモのRNAi実験

2016年3月15日

岩崎 佐和

今年に入り、オオヒメグモの初期胚形成に大事な遺伝子を探す目的で、RNAi (RNA interference)を用いた遺伝子の機能抑制実験をはじめました。RNAi実験では、生体内に2本鎖RNA(dsRNA)を導入することで目的遺伝子のmRNAを切断し、機能を抑制します。オオヒメグモの場合は、母親グモの腹部にdsRNA溶液を注射し、生まれてくる卵に対して機能抑制を行います。注射は2~3日おきに合計4回。RNAiの効果は、注射を始めてから約15~20日後に生まれた卵に現れるので、最近はそれらの観察をしています。どうやら初期胚形成に異常が見られるものが少し見つかって来たので、今後詳細に解析していきたいと思っています。どんな機能が明らかになるのか、楽しみにお待ちください。

クモ成体への注射は、二酸化炭素による麻酔と、極細のガラス針を用います。クモの表面は外骨格のため固く、それを通り抜けると中は柔らかな感触です。小さな生きものなので毎回とても緊張します。注射の後は、元気な卵を産んでくれるようにと、餌やりにとても気を遣っています。先日は合計6匹の母親グモに注射をする中で、1匹だけ特に餌をとるのが下手になってしまった個体がいました。少し刺激しただけで怯え、餌(コオロギ)に対しても怖がっているようでした。そこで何とか食べてもらえるよう、小さめのコオロギやハエをあげたりと様々な工夫をこらしました。その甲斐あってか、約5日ぶりに餌を食べてくれた時は本当に嬉しかったです。その後しっかり卵を生み、観察することができました。クモがいつお腹を空かせているのか、体調は良いのか悪いのか、言葉が伝わらないため本当のところは分かりませんが、出来る限り感じ取りたいと思いながら、日々実験をしています。

[ ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 岩崎 佐和 ]

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