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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【『脳の生命誌』展リニューアル】

遠山真理
 この場をかりて告白させていただきますと、実は私、脳というものが苦手でした。理解の範囲をはるかに越えるはたらきがあるのに、見た目には柔らかそうで、簡単に崩れてしまいそうな脳。少し怖いといったほうがあたっているかもしれません。生命誌研究館では『脳の生命誌』展で本物の動物脳標本が約50点も展示してあるのですが、初めてこの部屋に入ったときには少しクラクラしたものです。
 そんな私が『脳の生命誌』展のリニューアルの担当となり、脳という未知の世界にどっぷり浸かることになりました。脳に関する研究について全く初心者だった私は、まず現状把握からはじめたのですが、明らかになっていることがわからないことの海に浮かんでいるような印象で、もちろん、そんなに簡単に全てが見通せてしまったらつまらないですが、時には脳研究の海におぼれることも。そんな時、浮上の助けとなったのが実際に脳の研究をされている方への取材です。
 先日、お会いした先生は動物の脳の形態と機能の関係を研究されていて、研究室には哺乳類や鳥類の脳標本がたくさん保管してありました。本物の脳標本を前に、「指が器用に使える動物は小脳の半球が発達しているようにみえませんか」と言われてみると確かにそう見えますし、「カラスの脳の形は変わっているのですよ」と言われれば確かに大脳が大きくて賢そうな形です。実際に研究されている人の話は力強くて、奥が深くて、脳が苦手だったことも忘れて、ついつい引き込まれてしまい、しまいには脳標本まで触らせてもらっていました。もちろん、最初はおっかなびっくりでしたが、意外にも脳標本はしっかりとしていて、固めのプリンを想像していた私の期待を裏切る重量感。じっくり見比べると違いも良く見えてきたりと、思わず感激してしまいました。脳を愛づる人への階段を一歩登れたような気分です。
 脳の共通性と多様性に注目した新しい『脳の生命誌展』は6月にオープンする予定です。以前の私のように脳はちょっと苦手だな・・・というかたにもお勧めできるスマートな脳の模型も登場します。乞うご期待です。


[遠山真理]

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