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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【人々とのつながりの中で】

村田英克 研究者が現場で考えている事柄を表現に展開していくという私たちの仕事の大部分は協働作業です。研究者への取材、スタッフ同士のディスカッション、そしてプロの作り手の方々と共に積み重ねる時間の中でどれほど考えを深めたかという過程が出来上がったものに反映されます。
 誰かが私たちの部屋に入って仕事をしている様子を見ると、皆がPCに向かってキーボードの音だけが静かに響く時には、気むずかしそうで声を掛けづらいと感じるかもしれません。打ち合わせのテーブルで、季刊誌のおまけやリサーチなど表現のアイデアを話し合っている様子は、遊んでいるように、楽しそうに仕事しているように思うでしょう。生の言葉が届き、お互いの表情が見えれば意思疎通がはかりやすいものです。
 今スタッフが四人いて、一人一人が難しい顔をしてPCに向かっているとき、何をやっているのかというと、例えば、取材時の印象を想起しながら著者の研究姿勢が伝わるようにと文脈を工夫していたり、著者との緻密な編集上のやりとりの最中だったり、読み手を想像しながら魅力的な言葉を模索し、図を試行錯誤していたり、制作の段取りがうまく運ぶようにとデザイナーさんの作業を想像しながら扱いやすく入校データを揃えていたり…。
 新しくスタッフになった人が仕事を覚えるにはある程度の時間が必要です。自分の作業が全体の流れのどこにあるのか、例えば編集中の記事で、取材した研究者に次回確認するポイントや、デザイナーさんの作業との関わり、もちろん展示や季刊誌を受けとる人々など、外にいて一緒に生命誌を進めている人々とつながっているというイメージを自分なりにつかんでいくことが大事だと思います。その上で一段一段を大切に考えて責任をもってことを運んでいくという感覚が身につくには、やはり具体的に一つ仕事の始めから出来上がりまでを一通り自分でやってみるほかはありません。大事なことは、今ここにいない人々とのつながりを常に想像して、自分なりに一歩踏み出して展開していくこと。みんなでそうやっていく中から仕事のルールも生まれてきます。

 [ 村田英克 ]

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