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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【でかす】

村田英克  今年の干支は辰です。昨年12月の公開セミナーにあわせてオープンした「エルマー・バイオヒストリーの冒険 -鳥になったリュウ-」は干支に因んで企画したわけではありませんが、今、二つの一致に気づきました。BRHは新年本日より開館していますので是非リュウを見にお越しください。
 世の中には、龍を見たことがある人がいるようです。その中の一人、農薬を使わずにリンゴの自然栽培を実現した木村秋則さんについて、これまでそのお名前くらいは聞いていたのですが、私は、このお正月休みにはじめて木村さんの『奇跡を起こす 見えないものを見る力』という本を読みました。印象に残ったのは「でかす」という言葉です。できるようにする。常識にとらわれず、自然をよく観察し、相手(リンゴ)の気持ちになって考えて、思いついたことをすべて試してみる。山ほどの失敗を重ねて、人々のつながり、生態系の一員であることの自覚を深め展開していく生き方に心をゆさぶられました。一番かんたんで一番むずかしいことだと思います。来年度の季刊誌のテーマに「でかす」というのはどうだろうか。
 今、BRHホームページの刷新に取り組んでいます。BRHサイト内部の情報、記述を外部へ開いていきながら、外部からの意見や参加を含めて、全体として、生命誌を考える場の広がりを求めての「インターフェース」というものを試行錯誤しています。もう一冊、お正月の帰省から戻る新幹線の中で読んだのが『日本の大転換』中沢新一著。原子力と現代資本主義に依存する社会から脱却する構造を浮かび上がらせ、読者に語りかけています。この中で、市場の内部でいそしまれる価値交換に対して、外部から価値世界の内部へと未知の要素を取り込む際に機能する「インターフェース構造」の重要性が説かれています。まったくレベルは異なる話ですが、強く独自性を持った内部構造を形にしながら、常に動的に外部を取り込んでくるようなインターフェースを根本から考えなくてはいけないと思いました。BRHホームページは3月から4月にかけて新しくします。

[ 村田英克 ]

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