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研究館より

表現スタッフ日記

2020.03.16

もうすぐ新しい季節

私が初めて生命誌研究館(BRH)の存在を知ったのは15年ほど前、高校3年生の時でした。志望していた大学の専攻名が「生物学」から「生命科学」へと変わることを知り、2つの分野の違いをネットで調べていた時にBRHのHPに辿りつきました。当時は関東に住んでいたので「面白そうなところだけど遠いなぁ」とHPを深掘りすることはありませんでした。そして、ネットの情報探索で生物学と生命科学の違いを知ることはできず「どっちの分野でも生きもののことを勉強できるなら問題なし!」と深く考えることなく、進路を変えずに受けた大学に入学しました。

それから7年後、縁がありBRHの「表現を通して生きものを考えるセクター」で勤めることになりました。といっても7年間BRHへの気持ちを温め続けていたわけではなく、転機が重なり思わずBRHに飛び込んでしまったというのが本当のところです。ですから、1970年に江上不二夫先生が作られた「生命科学」という分野が「生命誌」につながっていることもBRHに入って初めて知りました。知らないことだらけの私を仲間に入れてくださったBRHの懐の深さにただただ感謝です。

今年の春、BRHに勤めて7年半が経ち、大好きな職場を離れることにしました。思わず飛び込んだBRHでたくさんの方に助けられ、作品作りを続けることができました。WEBコンテンツ「生命誌アーカイブ」の制作途中には中村館長に「あなたじゃなくてもできることをしようとしている。他の人ができないことをしなければ作る意味がないでしょ」と言われうんうん、唸りながら奥田透也さん(デザイナー・プログラマー)と一緒にコンテンツを完成させました。その後、数年かけてWEBコンテンツを育て展示にすることもできました。「細胞展」の刷新では「ひとつの細胞がいきいきと生きている様子を表現したい」という難題にトータルメディア開発研究所のチームの皆さんが一緒に挑んでくださいました。制作した映像を高校などの授業で活用してくださる先生方もいらっしゃりとても嬉しい気持ちです。自分がBRHを離れても、作った作品を見てくださる方、使ってくださる方がいらっしゃることで、新しい展開が生まれたらと願っています。

この春のことをまた少し時間が経ってから振り返った時、自分はどんなことを思うでしょうか。さまざまな出来事の断片がつながって、今はまだ見えていない景色が見えるはずと思いながら、前を向いて歩きます。