1. トップ
  2. 語り合う
  3. 研究館より
  4. 一人であり37兆個である

研究館より

表現スタッフ日記

2020.12.01

一人であり37兆個である

本年最後の季刊「生命誌」104号を本日発行しました。巻頭では、iPS細胞研究所の山中伸弥先生をお招きしてのシンポジウムの様子をお届けします。ウイルスという存在にかつてないほどスポットが当たった今年、iPS細胞の研究者として活動しながらCOVID19について最前線の情報を発信してこられた山中先生が、BRHの永田館長・中村名誉館長と語り合います。

Research & Perspective は単細胞生物の研究を紹介します。単細胞という生き方は生物が多細胞化するまえの祖先の生き方であり、今日でも地球上にたくさんの種類と数を誇る「多数派」の生き方でもあります。バクテリアからすれば、37兆個もの細胞が集って1個体となっている私たちヒトはとても複雑で不思議な存在に見えるのかな?などと想像しながらの楽しい制作過程でした。

Research01は、深海の未知の単細胞生物群から発見された、私たち真核細胞の祖先に近い古細菌(アーキア)の研究です。真核細胞の起源に迫る大きな発見、本文でぜひそのアーキアの意外な姿を見ていただきたいと思います。Research02は、真核細胞の核の大きさをを細胞全体の「8%」にするしくみに迫る研究です。サイズという着眼点から、真核細胞というシステムの複雑さと巧妙さが浮かび上がります。Perspectiveでは人間がつくった「人工細胞」から、生きものの始まりと進化を考える市橋先生のお話です。

「虫が苦手」だったり「犬より猫派」だったり、生きものの好き嫌いは人それぞれでしょう。でも人間が生物である以上、生命そのものへの無関心は、自分自身への無関心にほかならないと思うのです。肉眼では見えない細胞という存在を主役にすることで、生きものの普遍性と、深いレベルでのつながりを伝えることが104号の狙いです。細胞という基本単位でみれば、生きものはすべて膜をもち、代謝し、複製し、進化する存在。この大きな枠組でとらえることで、こまごました分類を飛び越えて、純粋に「私も生きてる存在の一つだ」と実感できないでしょうか。

紙工作「しっぽの生命誌」の最終回は私たちにもっとも身近な鳥の一つ、ツバメです。尾羽を開いて飛ぶ誇らしい姿をお楽しみください。

今年も3回の季刊誌の制作を通して9名の研究者との出会いがありました。過去の研究成果を十分に踏まえ、いま考えるべき問いをしっかりもつという共通の姿勢に多くを学ばせていただきました。「生きもののつながりの中の人間」を考えた2020年、偶然にも人間同士のつながり、生きもののつながりを身を以て感じる年となりました。来年も、生きものの美しさ楽しさに学びつつ、好き嫌いを超えた普遍的な知をつくること、一人ひとりが自分自身のものとして楽しめる生きものの物語をお届けすることを目指したいと思います!