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研究館より

中村桂子のちょっと一言

2021.03.15

人間を信じる気持ちを誘う社会を

3月11日が近づいています(書いているのは3月初旬)。昨日はオンラインで福島県の方たちの語り合いに参加しました。米作りや酪農が津波や原発事故で続けられなくなったところから立ち直る方たちの努力、Iターンで花の栽培を始めた若者、さまざまなアイディアを活かして地域おこしに務める女性、放射能の測定を続ける研究者などなど。皆淡々と暮らしを語り、どれほどの災害も一人一人の日常の積み重ねによってしか乗り越えられないことを伝えて下さいました。これで社会を変えるのだというような気負いがないからこその地道な積み重ねが、ゆっくりではあっても新しい東北を生み出すだろうと期待します。人間を信じる気持ちが湧いてきました。

一方、政府など公が関わる復興は、オリンピックというお祭りに眼を移しているうちにコロナ騒ぎになり、危うい状況です。”UNDER CONTROL”と言われた汚染水は増え続けていますし、廃炉問題は先が明確に見えません。こちらは人間不信にならざるを得ません。

人間が意味を持ち、力を出せるのは、やはり一人一人が考えて動く日常です。権力によって歪められた人間の行為は、良い方向にはつながりません。最近歪んでいる例が増えているようで気になります。女性も、地方での事例に本当の活躍の姿が見えることが多く、これがもっと増えたら暮らしやすい日本になると期待できる気がします。

中村桂子 (名誉館長)

名誉館長よりご挨拶