1. トップ
  2. 語り合う
  3. 研究館より
  4. 生命誌絵巻に魅せられて

研究館より

表現スタッフ日記

2022.04.15

生命誌絵巻に魅せられて

生きもので満たされた扇形の美しい「生命誌絵巻」に魅せられたのが30年前……その意味するものの奥深さに興味をもって20余年……初めはDNA、RNA? 真核細胞? ゲノム? 夢中でその意味するものを知りながらも生命誌(生命の歴史物語)の語る意味を読み解いていくたのしさはこれまで経験したことのないものでした。時間が経つと生命誌はDNA(生きものみんなが持っている)をもとにしながらもっと総合的に歴史のなかでお互いがどういう関係にあるのかということが記録されているものであることがわかってきたので、それを読み取り、そこから生きものというのは何なのかを知ることなのだということを知りました。現在地球上にいる生きものが38億年前の一つの祖先細胞から出発して長い旅を続けて今があります。今いる生きものは環境とのかかわりで偶然生き残ったのですが、生き残れなかったものたちのなかに1909年カナディアンロッキー山中のバージェス頁岩から発見されたバージェス動物群(5億7000万年前のカンブリア紀に爆発的に出現した無脊椎動物群)といわれるものがあります。「生命誌」を知る前に古生物学者のS. J. グールドが既存の分類体系のどこにも収まらない奇妙奇天烈な動物たち(例えば「生命誌の階段」にテンペラ画で描かれている5つ目のオパビニア)を調べ分類した「ワンダフルライフ」という物語に熱中しました。グールドは生物進化の物語のなかでも爆発的進化を中心に、人間だけはちがうのだという考えを捨て、人間も他の生き物もみなもっと大きな歴史の中で偶発的に生じた一員であるという見方をしようと語りかけ、今の世界は人類が支配しているという型どおりの考え方を捨てようと話しかけています。

「人間は生きものであり、自然の一部」を基本姿勢にして生きるという「生命誌」への入り口もこの本の下地があってのことだと思います。

私なりに考えて工夫したシナリオで展示案内をさせて頂きながら20余年は後悔と反省ばかりでした。ここ数年ご案内させて頂いた方々にアンケートを頂戴しています。  
読ませて頂きながら幼い子供さんから高年齢の方々までの思わぬ興味も知りました。
年齢層別、団体別に頂戴した感想の一部を記します。

小学生:
●ゲノム、細胞、人の生まれたとき、身近な虫や植物のこと、虫の擬態。植物の虫に食べられない工夫など 絶滅に興味

中高生:
●展示物の内容にその視点はなかったというプログラムがたくさんあって、知らない世界を詳しく説明していただき、興味深いたのしい時間でした
●「百聞は一見にしかず」的に見て学べた。ナナフシや蝶の幼虫を探す など体験するのがたのしく、面白かった。
●教科書だけの授業の不思議を解決できる知識がまし、詳しく知れた
●専門学校、大学生:難しい題材ですが比較的わかりやすく説明、展示されていた。
●興味、関心が広がったし、ゆっくり時間をかけて見せて頂きます。
●大きいスペースではないのに、興味深い展示がたくさんあって楽しかった。
●1回の見学では見足りなく、今後も数回見学したい

庭を愛する方のお話:
●庭は地球の縮図、テレビでみる他の星と比べても奇跡のような場所
●日常に対する新しい視点が得られ、生活周りのいきものの見方が変わる
●自然界の命の輪のおかげですべての生きものが共存できている

公民館講座、高齢者大学、シニア自然大学校、環境大学の方々:
●いきものがお互いに関係しあって生きている
●たった500万年前誕生したというヒトはもっと自然について考えなければならない。時間が限られていたのでもっとゆっくり見に再訪したい

お子様づれの親御さん、お孫さんとご一緒の方々:
●全空間を上手に使って立体的に、模型や実物とともに工夫された展示品が見るだけでもたのしい。ナナフシや4階の植物と虫探しがたのしい。
●たった500万年前誕生したというヒトはもっと自然について考えなければならない。

などそれぞれのお立場でのご意見を頂きありがとうございました。これらを参考にさせて頂いて、ご案内に工夫を続けてまいります。

 

渡邊喜美子 (館内案内スタッフ)

表現を通して生きものを考えるセクター