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研究館より

表現スタッフ日記

2023.03.15

初めまして 美しいとは

初めまして、2023年3月より表現を通して生きものを考えるセクターに入りました後藤聡と申します。寄生蜂を扱う動物生化学を専門としていました。絵を見ること、描くことが好きです。
私がJT生命誌研究館を知ったきっかけはいくつか存在するのですが その中でも特に表現セクターの概要に「これは科学の普及や宣伝ではありません。表現することで、科学についての新しいアイデアも生まれます。気持ちを込めて、独自で美しいものをつくる、この基本姿勢で表現を通して生きものを考えるという挑戦です。」と書いてありました。私はこの言葉を見た時に、なんて、なんてまっすぐな言葉とそれを体現するような活動をされている人々なのだろうと、生きものの研究を美しいものに表現しようと試みる姿勢に惹かれました。

ところで表現セクターの概要にも書いてある”美しい”とはどのようなものを指すのでしょうか。”わかりやすく”でも”綺麗”でもなく”美しい”ものとは何を表すのでしょうか。数ある”美しい”への解釈の1つですが、私は何か表現されている光景や意味に心が動かされる様を美しいものだと思っています。ヒトには直接見えていないものでもその意味を感じ取ったり味わう能力があります。絵を絵の具の塊と見ることでも、文字をただの音の羅列とみなすのではなくそれらから何かを感じ取ることがあります。例に挙げたヒトの営みに限らず、蝉の羽化する姿に訳もなく心を動かされたり、何億年もの時を得て日和見的な進化の結果複雑な模様を形成する蛾に感動を覚えるといったように、美しさはすべての生きものの営みが持ちうると考えます。

私は日々、机に向かって絵を描いていると視野が狭くなるのを感じます。狭くなっていることに気づいていない時や、壁に当たると過去の自分を模倣しそうになることもあります。そういう時こそ画集や人の言葉を見ます。他の人の表現する作品や美しさに触れると、空を見ていたつもりが水溜りを見ていたと気付かされるような感覚に陥ります。”美しい”の解釈は星の数ほどある上に、見るたびに姿を変える雲のように捉え所のないものです。その言葉の上で生きものの研究を美しく表現しようと試みる、表現を通して生きものを考えるセクターの人々と生きものの表現に関わる活動をしてみたいと強く思いました。
限りある時間の中で、追われるように流れるように手を動かしている日々ですが、生きものの研究を通じて美しいものを作る裏方の一人として頑張っていきたいです。皆様、これから何卒よろしくお願いいたします。