1. トップ
  2. 語り合う
  3. 研究館より
  4. 原点の場所

研究館より

表現スタッフ日記

2023.04.18

原点の場所

はじめまして。2022年12月から展示ガイドスタッフに加わった太田見恵です。私の生命誌との出会いは、高校時代にみた「生命誌の世界」というテレビ番組です。生きもののしなやかさ、一部ではなく全体として生命を見つめる大切さ、今ここに生きている私たちの中にこれまでの長い生命の歴史が刻まれていること‥。そのどれもが私にとって新たな気づきで、中村桂子名誉館長のやわらかな語りと生命誌という考え方に魅了されました。それをきっかけに生命誌研究館に足を運ぶようになり、サマースクールにも参加しました。サイエンティスト・ライブラリーの作成に挑戦するという内容で、中村名誉館長にこれまでの人生や生命誌への思いを直に聞いて文章に表現するという貴重な経験をさせていただいたことは、かけがえのない宝物です。

その後、大学ではアズキの起源や遺伝的多様性をテーマに研究し、卒業後は図書館等で学びの支援の業務に携わりました。いずれも生命誌との出会いを通じて芽生えた「生きものについて学びたい」、「人々の学びや気づきの過程に寄り添いたい」という思いから繋がっていった道です。振り返ってみれば、自分の歩みの根っこには生命誌との出会いが大きく存在しています。このたび、スタッフの一員として生命誌研究館にご縁をいただいたことに、原点の場所に帰ってきた懐かしさと喜びをしみじみと感じています。

私が思う生命誌研究館の魅力は、生命科学を心で感じられるところです。私は頭で理解するのがあまり得意な方ではありません。そのような私が「生命誌の世界」という番組になぜ魅せられたのかというと、中村名誉館長が生命についてわかりやすく解説するだけでなく、生命誌という視点をもとに、物語のように心に響く表現をしてくださったからです。

それは生命誌研究館も同じです。生命誌研究館では、生命誌を基本として生きものを見つめ、研究し、その過程や成果をさまざまな形で表現しています。生命科学を学べる場であると同時に、訪れた人がそれぞれに「生きていること」を感じられる場です。私の場合は、その表現にふれることで、どこか心が安らぎます。理屈を超えて、「生きているってすばらしいことだなあ」とただただ純粋に心で感じるのです。だれもが何かを感じられるような豊かな表現とゆとりある空間がここにはあります。何を感じるかは、それぞれの人が持つ背景や感性によって異なるでしょうし、同じ人であってもその時々によって変化していくと思いますが、生命誌研究館は、生命誌という一本の芯を貫きながら、そのような多様な感情を引き出し、受け容れる懐の深さを持っていると感じます。それはまるで、しなやかな生きものの姿そのものを体現しているようにも思えてきて、大変興味深いです。

私は現在、展示ガイドをさせていただきながら、このような生命誌研究館の奥深い魅力を再発見している毎日です。はじめたばかりでまだまだ未熟ですが、自分自身も日々生きものに心を寄せ、学び、感動し、そのことを皆様と共有したり、語り合ったりしていきたいです。どうぞよろしくお願いします。
 

太田見恵 (館内案内スタッフ)

表現を通して生きものを考えるセクター