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研究館より

中村桂子のちょっと一言

2023.11.01

夕焼けがきれいでした

昨日の夕方、見事な夕焼けに思わず声をあげました。丹沢の向こうに見える富士山は10月5日が初冠雪。まだ猛暑に悩まされている時でしたから、富士山とは言え雪が降るのかしらと思っていましたが、昨年より5日、平年に比べれば3日遅いだけだそうです。自然はそれなりに動いているとわかり、ちょっと安心しましたが、これだって変わっていくかもしれませんね。子どもの頃に描いた富士山はいつも山頂が白かったですし、やはり富士山は白が似合います。

夕焼けが消えると、白かった富士山が真っ黒く影絵のように浮かび上がります。これがまたきれい。日本人ですね。富士山が好きです。

夕焼けを見ると、思い出すお話があります。中村メイコさんが、お小さいときに、「夕焼けはなぜ赤いの」とお父様にお聞きになったのだそうです。子どもはよく聞きますよね。お答えは「空が恥ずかしがっているんでしょう」だったとのこと。最近の科学万能の社会では、そんなインチキを教えちゃいけませんよとなりそうです。日光は様々な波長の光からなっており・・・・。でも、小さな子どもへの答えとして素敵だと思いませんか。いつか、科学での答えを知るでしょう。でも、空が恥ずかしがると受け止める気持ちはその後も残るに違いありません。自然と接するときの大事な気持ちとして。メイコさんがそれを示して下さっています(因みに、メイコさんお近くにお住まいですので、同じ夕焼けをご覧になったでしょう)。

知識一辺倒になり、正解だけを求めて、ゆとりを失っているために、なんだかギスギスした社会になっているような気がします。空、山、雲が語ってくれる物語に耳を傾けることで広い心になることが大事ではないでしょうか。高層ビルばかり建てるのはそろそろ止めて。

中村桂子 (名誉館長)

名誉館長よりご挨拶