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研究館より

表現スタッフ日記

2024.01.05

小学校で「チョウの食草園」

今、地元の小学校で、先生や児童、地域の皆さんと一緒に「チョウの「食草園」づくり」に取り組んでいます。

たまたま愚息の通う小学校のPTA会長を引き受けて、引き受けた後で知らされたのが、令和5年度が創立150周年とのこと。なるほど言われてみれば、明治の夜明けとともに、鉄道が敷かれ、寺子屋が小学校になり……近代化の始まりから150年、今、全国で、小学校の創立150周年記念行事が同時多発的に行われているのではないでしょうか。市内だけでも数校それぞれが記念行事を行っているようです。

150年という時間は、一人の人間の一生、個人のレベルで考えて責任を負える時間スケールではありません。しかし、小学校の根付く地域の歴史・文化を語り継ぐ方々に話を伺うことができます。室町時代には寺内町として、江戸時代初期には酒造りの町として栄えた、その風景が今も日々の暮らしの中で目の端々に留まり、もちろん学びのカリキュラムとしても、子どもたちの地域を学ぶ学習の時間にも、日常と歴史時間の重なりの体験が織り込まれています。昨年7月に行った創立150周年記念行事では、そうした児童の学校生活と地域の文化を捉えた短編映画をつくって地域の皆さんにご鑑賞いただきました。映画は、たまたま小学校の150年目の節目に一保護者として居合わせた新参者の視点で、外から目線だからこそ、かえって新鮮に、この町の文化や子供たちの日常を掬い取ることができたのではないかと思っています。

わが小学校の立地は都市域です。しかし時代の変遷を経て、現在は1学年1学級。児童数も家庭数も、お互い顔が見える集団規模(およそ150人)であることは、地域コミュニティとしてはプラス要因です。150周年記念に短編映画をつくりながら、折に触れて、記録映画「食草園が誘う昆虫と植物のかけひきの妙」の話をしていたところ、校長先生から、小学校に「チョウの「食草園」を作りたい」と相談を受け「おお!(涙)うれしい! やりましょう!是非。」

生きものが暮らす場所としての「ビオトープ」を児童が学ぶ体験の場を校内に作りたいという校長先生の思いが周囲を動かし、予算獲得も含めてプロジェクトが実現! 既存の池の整備と隣接する植栽エリアの整備が始まりました。市の緑政課の支援の下、「循環」の庭づくりに取り組むNPOの方々の参加を得て、本格的な食草園づくりです。校内で「チョウの庭づくり」プロジェクトを推進する5年生の呼びかけで、休み時間には、腐葉土づくりのために、全校児童による落ち葉拾いも始まりました(写真右)。

どんな庭をつくりたいか?  5年生は班ごとにプランを立てて図面を引き。同時に、いま既に、校内にどんなチョウの食草があるか? 調べています(写真左)。

昨年10月からのいろいろな学びを経て、年が明けて、1月、2月の数回、造園の方々と一緒にいよいよ本格的な庭づくりが始まります。

チョウの「食草園」に取り組んでいるけれども、皆、このプロジェクトを通して、考えているのは「循環」「共生」の庭です。チョウを呼べる庭には、他にもいろんな虫たちも来るはず。「落ち葉」を集めて「腐葉土」に。土壌生物をはじめ、いろいろな生きものの食物連鎖によって成り立つ生態系の一員として、私たちの毎日の暮らしがある。いきなりそんなに大きなことを受け止めるのは難しいかもしれないけれど、少しずつ、いもむしが葉を食むように少しずつ、チョウの食草をきっかけに、身の回りの自然、自分を含む自然という“循環“を俯瞰し、実感する体験が一人ひとりに得られれば、嬉しいなと思っています。

っということで、これまでの学習を踏まえて、1月2月はいよいよ庭仕事だ! 皆、がんばろう! エイエイオー!



文中リンク(出典)
「徳川日本の文明に学ぶ」芳賀徹(東京大学名誉教授)×中村桂子(JT生命誌研究館名誉館長)[季刊生命誌96号TALK]
「人類の飛躍と没落 -共感社会と言語のもたらした世界-」山極壽一(総合地球環境学研究所所長)[季刊生命誌115号SYMPOSIUM]
記録映画「食草園が誘(いざな)う昆虫と植物のかけひきの妙」
「土は生きている -土壌動物が育む土壌環境-」金子信博(横浜国立大学)[季刊生命誌63号RESEARCH]