中村桂子のちょっと一言
2026.04.15
レイチェル・カーソンを読み返して
古典を読み返すという企画で、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』を読み返しました。刊行から64年、もう古典と言われるのかと思いながら。
第二次対戦後のアメリカで、DDTをはじめとする農薬が無制限に使用され、その結果、農薬のついた虫を食べた鳥が死に始めたことに、野鳥愛好家が気づきました。このままではいつか鳥がまったく鳴かなくなるのではないか。ここで警告してほしいと依頼されたカーソンが、専門家の協力を求めて書いたのが『沈黙の春』です。自然生態系の破壊という環境問題を指摘した“古典”として評価されています。
1970年代、環境汚染の問題が浮かび上がってきた時に、この本を読んだことを覚えています。でも、今改めて読み直し、当時は本当のカーソンの思いを読みとれていなかったと反省しきりです。
一つは、地球が水と土の星であり、そこにある緑が支える生態系がいかに複雑にできているかを知って欲しいという思いで書いていること。
次いで、農薬(化学物質)の問題だけでなく、放射能の問題も指摘していること。この二つが、「過去四半世紀に、その破壊力を増大させただけでなく、破壊の質も変えてしまった」とあります。その通りです。
更には、戦争にも触れています。そもそも殺虫剤は、戦時中に化学兵器開発の際に昆虫を用いたので次々開発され、安価に生産されるようになったのだとあります。そこで戦後、大量生産、大量使用となったわけです。それらを考えたうえで、今の社会が進んでいる道ではない、「別の道」を歩こうという提案が、カーソンの一番の目的です。
「生命誌」での考えとドンピシャです。カーソンと「生命誌」について語り合ったら楽しかったろうな……ちょっと間に合わなかったのが残念です(実は、カーソンは私の母と同い年であることにも今回気づきました)。生命誌では、「別の道」というより「生きもの本来の道」と考えています。
中村桂子
今回書いた本は、 『すごい古典入門 レーチェル・カーソン 「沈黙の春」』(中央公論新社)です。 手に取っていただけると嬉しいです。
第二次対戦後のアメリカで、DDTをはじめとする農薬が無制限に使用され、その結果、農薬のついた虫を食べた鳥が死に始めたことに、野鳥愛好家が気づきました。このままではいつか鳥がまったく鳴かなくなるのではないか。ここで警告してほしいと依頼されたカーソンが、専門家の協力を求めて書いたのが『沈黙の春』です。自然生態系の破壊という環境問題を指摘した“古典”として評価されています。
1970年代、環境汚染の問題が浮かび上がってきた時に、この本を読んだことを覚えています。でも、今改めて読み直し、当時は本当のカーソンの思いを読みとれていなかったと反省しきりです。
一つは、地球が水と土の星であり、そこにある緑が支える生態系がいかに複雑にできているかを知って欲しいという思いで書いていること。
次いで、農薬(化学物質)の問題だけでなく、放射能の問題も指摘していること。この二つが、「過去四半世紀に、その破壊力を増大させただけでなく、破壊の質も変えてしまった」とあります。その通りです。
更には、戦争にも触れています。そもそも殺虫剤は、戦時中に化学兵器開発の際に昆虫を用いたので次々開発され、安価に生産されるようになったのだとあります。そこで戦後、大量生産、大量使用となったわけです。それらを考えたうえで、今の社会が進んでいる道ではない、「別の道」を歩こうという提案が、カーソンの一番の目的です。
「生命誌」での考えとドンピシャです。カーソンと「生命誌」について語り合ったら楽しかったろうな……ちょっと間に合わなかったのが残念です(実は、カーソンは私の母と同い年であることにも今回気づきました)。生命誌では、「別の道」というより「生きもの本来の道」と考えています。
中村桂子
今回書いた本は、 『すごい古典入門 レーチェル・カーソン 「沈黙の春」』(中央公論新社)です。 手に取っていただけると嬉しいです。


中村桂子 (名誉館長)
名誉館長よりご挨拶