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研究館より

ラボ日記

2020.05.01

コンピュータによる生物実験

新型コロナウイルスの拡大により外出を控え、皆様も生活が様変わりした日々を過ごしているかと思われます。JT生命誌研究館の多くの研究者も在宅勤務となり、あまり生物実験ができない状況です。ただ、私が得意とする生物実験は、コンピュータを利用した数理的な生物実験であり、在宅勤務でも実験可能な研究であるので今こそ紹介をする時なのかもしれません。

私は理論生物学という研究分野を学んできました。理論生物とは、ざっくり言うと生命現象に対して数学や物理学の知識を用いて研究を行う分野です。私自身も物理学の中で特に力学を用いて生物の研究を行っています。ここで疑問となるのが、どうやって数学や物理学の知識を生物に用いるかなのですが、その1つとしてコンピュータを用いて、生命現象を計算機実験(シミュレーション)により再現することで、数理的な研究を行っています。例えば、私が所属する研究室のクモ胚の発生における細胞分裂や細胞の配置換えの挙動を、力学の知識に基づいてプログラミングし、そのプログラムを計算することによりコンピュータ上で再現します(下図参照)。他には、細胞内での遺伝子のネットワークの繋がりを計算し、遺伝子の発現量の変化をシミュレーションしたりできます。特に、コンピュータを用いた生物実験で有用な生命現象は、生物の進化です。実際の生物の進化は膨大な時間がかかりますが、コンピュータで数値計算することで現実的な時間で生物の進化について検証が可能となります。

私は、この春からJT生命誌研究館に所属する新参者なので、まだ研究は始まったばかりですが、いずれ面白い結果を報告できることを楽しみにしております。そして、皆様に生命現象には様々な数式や物理法則があることをお見せしたいと思います。
 
 
コンピュータ上で再現した細胞集団の例

藤原 基洋 (奨励研究員)

所属: 細胞・発生・進化研究室

生物の形作りにおける物理背景、特に力学に興味があります。力学を基にした数理モデルを構築し、コンピュータ上でクモ胚の形態形成を再現することで、生物の形作りのルールを見つける研究を行っています。