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研究館より

ラボ日記

2020.11.16

高校生との研究活動

最近、高等学校との「共同研究」の話が動き始めています。

昨年4月から研究室でプラナリアを飼い始めました。プラナリアは、後口動物(脊椎動物など)と前口動物(節足動物など)の分岐点に位置する進化的にも面白い生きもので、マウスとハエに共通する形づくりの機構があるとすればそれはプラナリアの時点で獲得していたのではないかと考えられます。この特徴は、「生きもののかたち」に特段の興味を持っている私にとってはすこぶる魅力的です。プラナリアの飼育開始以来、素人ながらもいろいろと遊んでいるうちに面白い現象をいくつか見つけました。世間話として高校の先生たちにそういう話をしていたら、「ぜひ、高校でもやってみたい」とお話をいただき、現象としてはかなり面白く高校でもできるテーマをいくつか考えて提案したところ興味を持っていただきました。

高等学校なので我々の研究室と同じわけにはいきません。十分な機械もなければ試薬もない環境です。できる実験は限られています。それでもできることはあります。プラナリアの研究には時間がかかるというのが実感です。最短でも1週間、長ければ1〜2ヶ月の飼育と観察が必要な場合もあります。日々の飼育と観察を丁寧に行なうことで新しい発見が生まれます。先日も「ひとつ目」になる現象を見つけましたが、それも補助員の丁寧な観察の賜物です。ある実験操作をして再生できるかどうかだけが興味だったので、再生できることが判明した瞬間に私は観察をやめましたが、補助員はその後も一匹ずつ丁寧に観察を続けてくれました。その結果、再生はできるが目がひとつしかできないという不思議な現象に出会えたのです。

時間はかかるけれど決して難しい仕事ではない、雑にすると見失うが丁寧に続けると新しいことがどんどん見えてくる、こういう研究テーマは高校生にこそふさわしいのだろうと感じます。正解がわかっているわけではありませんから、日々の観察から得られた結果をうけて、一体何が起こったのかについて考えなければなりません。次にどういう実験を計画するのかについて議論をすることも必要になります。すべては論理的に思考していく過程です。決して難しいことではありませんが、おそらくこれまでに一度も経験したことのない方法で思考することになります。

論理的に思考する習慣がつけば学習能力も上がるという副産物も期待できるでしょう。しかし、私が期待していることはそれではありません。私たち研究者が研究に引き込まれる最大の魅力を皆さまにも感じていただきたいと常に思っているのですが、それを高校生にまさに体験してもらえるのです。すでに引かれた線の上を進むのではなく、あっちに行ったりこっちに来たり、進んだり戻ったりしながら真相に向かう日々を過ごすことは、小さな証拠の積み重ねから真犯人を追い詰める名探偵のごとく、もっともスリリングでもっとも魅惑的な得難い体験になるはずです。

これから高校生が頑張って研究してくれると思いますので、成果が出てくればまた報告させていただきます。

橋本主税 (室長)

所属: 形態形成研究室