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研究館より

ラボ日記

2021.05.14

変わったものを観察する

私の研究分野である理論生物学において、生命現象の本質をとらえる観察眼を養うことは大切です。私は観察眼を養うために、(最近はまた外出自粛の流れになっていますが)野外観察を良くします。この時、私は周りと比べて変わったものがいないか探して観察します。例えば、2ヶ月前に咲いていた、桜(ソメイヨシノ)の花びらは通常5枚です。花びらが変わったものがいないか探してみると、花びらが4枚のものがいたり、おしべの一部が花びら化しているものがいたりしました。また、クモの研究室らしくクモを例に挙げます。JT生命誌研究館とJT医薬総合研究所の敷地内には、ギンメッキゴミグモが生息しています。その体の色を観察すると2つの色のタイプがいました。1つは名の通り体が銀色で、もう1つは体が黒くくすんでいました。さらに観察してみると、生息している場所に違いがあり、体が銀色の個体は日の当たるところ、体が黒くくすんでいる個体は茂みの中にいました。1つの予想として、周りの環境の明るさが体の色に影響しているかもしれません。

こういった変わったものを見つけることは面白いです。この変わったものを見つけることが、実はその背景にある生命現象を理解する上で大いに役立ち、重要な発見につながることがあります。変わったものを見つけるにはそれなりに習熟した観察眼が必要ですが、観察眼を一朝一夕に養うのは難しいです。ただ、近年はコンピューターにおける機械学習の発達が目覚ましく、この変わったものを見つけることにも応用が可能です。これによりあたかも熟練の観察者が隣にいて導いてくれるように誰もが変わったものを観察することが容易になっていくでしょう。容易に観察眼を養うことができれば、多くの人が鋭い生物の問いを見つけ出せるようになり、生命現象への探究がさらに活発になるでしょう。
 
おしべの一部が花びら化したソメイヨシノの花

藤原 基洋 (奨励研究員)

所属: 細胞・発生・進化研究室

生物の形作りにおける物理背景、特に力学に興味があります。力学を基にした数理モデルを構築し、コンピュータ上でクモ胚の形態形成を再現することで、生物の形作りのルールを見つける研究を行っています。