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研究館より

ラボ日記

2022.10.04

市民と科学

日本は小さな島国である?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する前は、高校生の団体見学向けの館内講演など行っておりました。その際、参加していただいた高校生の皆さんに「日本は小さな島国であるという言葉を耳にしたことがある人は多いと思いますが、本当に小さな国だと思いますか?」という質問をすることがありました。この問いに対して、いくつかの根拠を挙げて個人的な見解を説明するのですが、終了後のアンケートに「自分が常識と思っていることの根拠について考えるきっかけになった」といった狙い通りの回答があると飛び上がるほど嬉しいものです。
科学の世界では、「結論の根拠として実験結果がどれくらい信用できるのか」について検討する機会が多くあります。日常の中でも一度立ち止まって、自分の意見や認識の根拠について考えてみるのは、科学的な思考の基本になるだろうと思っています。
皆さんも、自分の「常識」の根拠について、問いを立ててみませんか?

市民科学

個人的な野望として、全人類をアマチュア科学者にして、「科学的に思考する」のが日常であるという世の中を創りたいと思っています。そうすることで解決できる問題も沢山ありそうですよね。
日本の昆虫学は、熱心な昆虫愛好家が収集した情報が役立っているといった、アマチュア科学者の活躍に支えられている部分も多くあります。我々が作成・公開しているInsectInDB のデータもそうです。

近頃気になっているのが、「市民科学(シチズン・サイエンス)という言葉です。本来は広い概念を含む言葉のはずなのですが、どうも「市民を無料の労働力として利用しているだけなのでは?」と感じられる活動が目につくように思えてなりません。もちろん、調査やサンプル採集といった科学の活動に、一般の方々に参加していただけるというのは有意義なことです。それをきっかけにして、科学にもっと興味を持って頂けると嬉しいことではあります。が、それだけではちょっと寂しい。科学に興味が湧いたら、自分で「問い」を見つけるところまで踏み込んでほしいと思っています。

参加して頂けるとありがたい

市民科学について偉そうに意見を書きましたが、自力での採集が難しいアゲハチョウの仲間を、提供して頂くという形で我々の研究に参加してくださる方がいらっしゃるのは大変ありがたいことです。

例えば、クロアゲハやミヤマカラスアゲハやキアゲハは、現在の研究で重要な位置づけの種なのですが、JT生命誌研究館がある高槻市ではなかなか入手が難しいチョウです。小一時間ほど車を走らせて、少々山間の地域へ出かけて探していますが、毎日行けるわけでもないし、そんなに沢山は採れません。

Twitterをはじめとするソーシャルネットワークサービスでは、日々アゲハチョウに関する情報も流れています。例えば、ミヤマカラスアゲハを捕まえた!といった写真がアップされています。SNSでチョウの写真を探して、簡単に行ける範囲でもっと効率よく採集できる場所はないものかと探していました。そうすると、幼虫を飼育していたり、日常的にチョウと接している方々がいらっしゃることも見えてきます。

Twitterで知り合うことができた方々に連絡をとってみたところ、とてもありがたいことにクロアゲハ・ミヤマカラスアゲハ・キアゲハを提供して頂けました。SNSが無ければ知り合うことができなかっただろうと思います。チョウの送付を快く引き受けてくださった方々に、ソーシャルネットワークのありがたさを実感しました。
アゲハチョウの仲間は近親交配に弱いので、遺伝的な多様性が低いと累代飼育が続かなくなってしまいます。別の地域の個体を導入できると、この問題を少しだけ解消することができます。手に入りにくいチョウを入手できることに加えて、飼育中の集団の維持にも役立つので、二重のありがたさがあります。

こういったご縁をきっかけに、何らかの科学的な活動につなげられたらなぁ、と考えてみたいと思います。

謝辞

研究へのご協力に感謝致します。
趣味のアゲハ館さん
みっちゃんさん

アゲハチョウを研究材料として、様々な生き物がどのように関わり合いながら「生きている」のか、分子の言葉で理解しようとしています。