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研究館より

ラボ日記

2026.02.17

見えないものを見てみよう

私たちは、外界の情報の大半を視覚から得ています。「一目瞭然」「百聞は一見に如かず」といった言葉が示すように、「見えること」は物事を理解するうえで非常に重要です。
実は研究の世界においても、「そのままでは見えないものを、見えるようにする」可視化という手法が頻繁に用いられています。世界中の研究者が、今日見えないものを明日は見えるようにしようと、日々研究を重ねています。私自身も現在の研究で、可視化技術を用いて骨などのコラーゲン構造の動態を観察し、その制御機構に迫ろうとしています。

可視化の方法としては、試薬による染色や、下村脩博士のノーベル賞受賞で広く知られる GFP に代表される蛍光タンパク質が用いられます。蛍光タンパク質を、観察対象となるタンパク質に結合させ、その融合タンパク質を特定の細胞や組織で発現させることで、対象を蛍光標識し詳細な観察を可能にします。

先日、黒田研究室から公開された論文においても、可視化技術が非常に重要な役割を果たしました。この研究では、ある遺伝子の機能に異常を持つ魚を解析しています。この遺伝子の機能を欠損した変異体は、肉眼で外見を観察しただけでは、ヒレの形がわずかに変形していることが分かる程度です。しかし、ヒレの先端部に存在するコラーゲン構造の可視化が、本来は美しく整列しているはずのこのコラーゲン構造の向きが乱れていることを明らかにしました。この結果は、この遺伝子からコードされるたんぱく質がコラーゲン構造の配向や形成に関わる重要な役割を担っていることを示唆します。

このように、可視化技術によって見えるようになったものを詳細に観察することで、今まで気づかなかった変化や、まだ知られていなかった現象を発見し、その背後にある仕組みに迫ることができます。

研究の現場で行われる可視化は専門的な設備を必要としますが、私たちの身の回りにも、少し視点を変えるだけで気付くことが出来る新しい発見が隠れています。いつも目にしている草の葉を裏返してみたり、道端の石をそっとひっくり返してみたりするだけでも、これまで知らなかった世界が広がるかもしれません。もうすぐ春が訪れ、多くの生き物が活動を始める季節です。ぜひ、いつもとは少し違う視点で自然を眺め、面白いものを見つけてみてください。
 

日野太夢 (奨励研究員)

所属: 形態発生研究室

多様な生き物の形を、どうやって作っているんだろう?という疑問を解き明かすべく、体の形の基本となる骨の形成制御機構を研究しています。