1. トップ
  2. 語り合う
  3. 研究館より
  4. AIとの付き合い方

研究館より

ラボ日記

2026.07.15

AIとの付き合い方

AI (artificial intelligence、人工知能) が人間の活動に根本から影響を与えているのを実感しています。経済発展を牽引し、活動の仕方に変革を迫っています。しかし、人間が共有する外部の「頭脳」に頼り始めることによって、個々人の頭脳に何が起こるのか、一抹の不安を覚えます。対話式AIの回答の質はこの2、3数年で格段に高まっており、研究活動においてほぼ毎日何らかの目的で利用しています。この日記はもちろん自分の頭で書いていますが、AIの添削を受けたら大きく変わってしまうでしょう。提案された文面を見て良いと思う自分がいるかもしれません。個性の危機です。

科学は、自分が生んだアイデアと自分の出した証拠を他人に正確に理解してもらって評価を得ます。私は論文を書く際に、英語の文法と、伝えたいことが正確に伝わるかについてAIに相談しています。また、自分のアイデアが独自のものなのか、過去に類似のアイデアや試みがあったのか、アイデアの応用範囲はどこまで取れるのかなど、自分の限られた専門性に縛られずに広く関連事項を探索するのに対話式AIは最初のきっかけを与えてくれます。とりわけ技術面の調査は得意としており、人に聞けなかったようなことを色々と聞いて新たなアイデアに結びつれられることも大きな可能性を持っています。多くの研究者がそのような探索を無数にしていると考えると、科学の進展が加速しているのは間違いありません。

実践的なところで言えば、コンピュータ上でやりたいこと(データ解析など)に対してプログラミングコードを即座に提案してくれるようになったのは革命的です。夜な夜なバグと格闘していたときのことを考えると別世界です。今はAIに相談しながら自分のできることを増やし、広げていけることを非常に楽しく思います。

しかし、冒頭にも触れたようにAIを使い慣れることに不安もあります。特に、研究者人材を育成する立場からの不安です。私の経験に基づいて言えば、以前は外部の頭脳がなかったので、自らが愛着を持った教科書や専門書、いくつかのお気に入りの論文を大事にしてきたように思います。本には知識の所在があり、自分の頭の中とも繋がっていた気がします。教科書や原著論文を読まず、AIから得られる知識に頼っていたらどうなるのか、自分の頭の中で幅広い知識は連係するのか、独自の発想や行動力が養われるのか、否定はできませんが、心配しています。AIとの付き合い方は人それぞれで立ち入れませんが、依存的な気持ちが自分独自のアイデアの形成を阻むことがないようにして欲しいと願っています。

動物多様化の背景にある細胞システムの進化に興味を持っています。1) 形態形成に重要な役割を果たす細胞間接着構造(アドヘレンスジャンクション)に関わる進化の研究と、2) クモ胚をモデルとした調節的発生メカニズムの研究を行っています。