ラボ日記
2026.09.15
形が生むながれ
この夏、自分へのご褒美と称して、少し奮発して白竹堂さんで扇子を一つ選びました。
手に取った瞬間、竹のしなやかさと紙の軽さが指先に心地よく馴染み、それ以来、外出のたびにそっと扇子を開くのが、私の小さな楽しみになりました。
ハンディファンが街にあふれる今の日本の夏に、扇子という静かな道具を使うことには、どこか奥ゆかしい喜びがあります。
扇子を開くときの、あの一瞬の“間”が好きです。
扇骨の一本一本がスーッとしなやかに広がり、薄い和紙が空気を押して、わずかな風が生まれる。その風は、電気の力で生まれる風とは違い、どこか柔らかく、自分の動きと連動している分だけ、心にすっと馴染む気がします。
近年の日本の夏は、年々暑さが増し、ハンディファンや冷却グッズが必需品になりつつあります。便利さはありがたいものですが、その一方で、扇子のような静かな道具が少しずつ日常から遠ざかっていることに、どこか寂しさを覚えます。
ふと扇子を眺めていると、京・近江に息づく扇子づくりの長い歴史が思い浮かびます。
竹を選び、骨を削り、紙を張り、絵付けをする。そのすべての工程に職人さんの技が宿っています。
しかし、安価な海外製品や大量生産品との競争が厳しくなっていると聞きます。便利な電化製品が増えるほど、手仕事の価値は見えにくくなってしまうのかもしれません。
それでも、誰かの手が丁寧に作った道具を使うことには、確かな豊かさがあります。扇子を開くたび、竹の感触の奥に、職人さんが積み重ねてきた時間が息づいているように感じられるのです。
扇子を使っていると、生き物が進化の過程で生み出してきた “流れを操る器官”のことを想像します。
魚類の鰭は、放射状に伸びる骨を支えにして薄い膜を張り、水という流体との相互作用によって揚力や推進力を生み出します。
昆虫の翅も、細かな脈が網目のように広がり、軽い膜を支えて空気を捉えます。
どちらも、薄いシートをピシっと張り、流体との相互作用によって流れを生み出す、あるいは操るという点で、扇子とよく似ています。
形は、いつも機能を語ります。生き物たちは長い時間をかけて、環境に合わせて“流れを使うための形”を磨き上げてきました。扇子の骨組みを眺めていると、そんな生き物の長い進化の営みが重なって見えることがあります。
便利さが増す時代の中でも、手仕事の美しさや、形がもつ必然性を大切にしていきたい。日常の中で、ふとした時にそんな思いが静かに心に浮かびます。
見慣れない物体に少し警戒気味の我が家の姫様
手に取った瞬間、竹のしなやかさと紙の軽さが指先に心地よく馴染み、それ以来、外出のたびにそっと扇子を開くのが、私の小さな楽しみになりました。
ハンディファンが街にあふれる今の日本の夏に、扇子という静かな道具を使うことには、どこか奥ゆかしい喜びがあります。
扇子を開くときの、あの一瞬の“間”が好きです。
扇骨の一本一本がスーッとしなやかに広がり、薄い和紙が空気を押して、わずかな風が生まれる。その風は、電気の力で生まれる風とは違い、どこか柔らかく、自分の動きと連動している分だけ、心にすっと馴染む気がします。
近年の日本の夏は、年々暑さが増し、ハンディファンや冷却グッズが必需品になりつつあります。便利さはありがたいものですが、その一方で、扇子のような静かな道具が少しずつ日常から遠ざかっていることに、どこか寂しさを覚えます。
ふと扇子を眺めていると、京・近江に息づく扇子づくりの長い歴史が思い浮かびます。
竹を選び、骨を削り、紙を張り、絵付けをする。そのすべての工程に職人さんの技が宿っています。
しかし、安価な海外製品や大量生産品との競争が厳しくなっていると聞きます。便利な電化製品が増えるほど、手仕事の価値は見えにくくなってしまうのかもしれません。
それでも、誰かの手が丁寧に作った道具を使うことには、確かな豊かさがあります。扇子を開くたび、竹の感触の奥に、職人さんが積み重ねてきた時間が息づいているように感じられるのです。
扇子を使っていると、生き物が進化の過程で生み出してきた “流れを操る器官”のことを想像します。
魚類の鰭は、放射状に伸びる骨を支えにして薄い膜を張り、水という流体との相互作用によって揚力や推進力を生み出します。
昆虫の翅も、細かな脈が網目のように広がり、軽い膜を支えて空気を捉えます。
どちらも、薄いシートをピシっと張り、流体との相互作用によって流れを生み出す、あるいは操るという点で、扇子とよく似ています。
形は、いつも機能を語ります。生き物たちは長い時間をかけて、環境に合わせて“流れを使うための形”を磨き上げてきました。扇子の骨組みを眺めていると、そんな生き物の長い進化の営みが重なって見えることがあります。
便利さが増す時代の中でも、手仕事の美しさや、形がもつ必然性を大切にしていきたい。日常の中で、ふとした時にそんな思いが静かに心に浮かびます。


黒田純平 (室長)
所属: 形態発生研究室
色々な生物の形態形成に興味を持っていますが、主にゼブラフィッシュを研究材料として、細胞がコラーゲンの構造体との相互作用を介して構築する身体の形態形成原理を解き明かそうと研究をしています。