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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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動くと働く —— ニンベンが大事

2015年2月2日

御自身施盤工として働きながら、ものづくりについての本をたくさん書いていらっしゃる小関智弘さん。厚労省の「現代の名工」を選出する委員会で御一緒し、穏やかで、しかもさすが現場の技術者と思わせる厳しさを持つすてきな生き方をしている方と尊敬しています。その小関さんのお話を読み、面白いと思ったので紹介します。職人の間で言われてきた「機械にニンベンをつけて仕事をしろ」という言葉を今も印象深く覚えているとおっしゃるのです。現場はどんどん機械化していくけれど、マニュアル通りやっているだけでは進歩はない、それぞれが考え自分らしくはたらかせなければいけない、ということを若い人に伝える言葉なのでしょう。基本は人であるという考え方が現場を支えていることがよくわかります。

ところで、今のトヨタ自動車の基になった豊田佐吉創業の会社は、「豊田自働織機」だったのだそうです。ところが、機械の輸出が始まり、社名を英語表記する必要が出てきた時、automatic(自動)にするしかありませんでした。そこで佐吉が、「うちの機械は動くんじゃない働くんだ」と嘆いたというエピソード。いいなあと思います。確かにニンベンがついています。このような漢字の面白さ、日本語の豊かさが、私たちの考え方を支え、時に広げる役割をしているのではないでしょうか。

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